巨大ファイル転送をサービス化する
続く、日本アイ・ビー・エム株式会社 WebSphere事業部 テクニカルセールス&サービス 恩田洋仁氏のセッションのテーマはファイル転送のサービス化だ。アプリケーション統合において、ファイル転送は外せない分野となっているが、ESBでは課題になるケースがある。
ESBでは異なるデータ形式を持つシステムをつなぐため、内部を流通するデータの解析と直列化を行う。物理形式の変換をESBのパーサーが行うため、インターフェイス管理が劇的に楽になる半面、アクセスが集中するESBでファイル転送のような大容量のデータを扱う際はパフォーマンスに注意が必要だ。ESBで消費するメモリについても転送データの数倍から数十倍必要というケースがある。またESBは多数のシステムと連携するため、ネットワークの帯域も確実に保護する必要がある。またファイル連携の実装は転送後のジョブの起動やファイルの完全性チェック等に複雑な処理を行っていることが多い。このような要因によってファイル連携がESB導入の妨げになることがある。
それではどう対応するか。完全な解はなかなか出てこないのだが、WebSphere MQ File Transfer Edition(図2、以下:WMQFT)を利用することで大きな作り込みをすることなくファイル転送自体をサービス化、仮想化できる。従来のMQ製品にファイル転送機能がなかったが、WMQFTはサーバーをまたがってのファイル連携の管理、監査証跡を一元的に行うことも可能にしたMQの上位製品だ。
それではESBとWMQFTがどう関係するのか。まずリアルタイム連携のためのIT基盤をESBで構築し、ファイル転送のためのIT基盤をWMQFTで構築する。ESBに接続するシステムからのファイルの転送指示イベントは、ESBを介してXML形式のMQ/JMSメッセージの形で転送基盤に送られる。ESBに接続しているシステムならどこからでもファイル転送指示を出すことができるようになり、ESBによるファイル転送の仮想化が可能になる。そして転送が行われると、ログもXMLの形でESBにパブリッシュされる。ファイル転送の一元管理を可能にすると同時に、監査ログとしても活用できる点も注目だ。
このようにファイル転送をサービス化することで仮想化やガバナンスの強化というESBの目的を失うことなく、負荷がかかるファイル連携部分をESBの外に切り出すことができる。