IBMは、AIセキュリティチームとAIガバナンスチームが連携して企業のリスク態勢を統合的に監視できる業界初のソフトウェアを発表した。
同ソフトウェアは、「watsonx.governance」と「Guardium AI Security」を強化・統合し、エージェントを含むAIシステムのセキュリティーと信頼性を確保しながら大規模な環境で運用できるよう顧客を支援するもの。watsonx.governanceはIBMのエンドツーエンドのAIガバナンス・ツールであり、 Guardium AI SecurityはAIモデル、データ、使用法を保護するIBMのツール。同ソフトウェアにより、IBMはAIエージェントを組織全体に拡大する企業の動向に対応するという。
今回の新しいオファリングは、以下のような機能を備えているという。
1, エージェント型AIに対するセキュリティーの統合と自動化
IBM Guardium AI Securityとwatsonx.governanceの統合により、EU(欧州連合)AI規則やISO 42001を含む12の異なるフレームワークに対するコンプライアンス基準を検証するユーザーのプロセスをサポートするとしている。
IBMはまた、AllTrue.ai社との協業を通じてGuardium AI Securityに新機能を導入するという。クラウド環境、コードリポジトリー、組み込みシステム内で新たなAIのユースケースを検出する機能などを追加し、分散化が進むAIエコシステムに広範な可視性と保護を提供するとしている。脅威を特定すると、IBM Guardium AI Securityはwatsonx.governanceから適切なガバナンス・ワークフローを自動で起動するとのことだ。
さらに、IBM Guardium AI Securityに自動レッド・チーミング機能を新たに搭載。企業はAIユースケース全体の脆弱性や設定ミスの検出と修正を実施できるという。加えて、コードインジェクション、機密データの暴露、データ漏えいなどのリスクを軽減するため、入力/出力両方のプロンプトを分析するカスタムセキュリティーポリシーも定義できるとしている。現在、IBM Guardium AI Securityで利用可能となっているこれらの機能とwatsonx.governanceの統合は、2025年末までに展開予定だという。

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2, エージェント型AIの評価とライフサイクル・ガバナンスの強化
IBM watsonx.governanceを用いることで、ユーザーは開発からデプロイまでのライフサイクル全体にわたってAIエージェントを監視、管理できるようになったとしている。評価ノードをエージェントに直接組み込めるため、ユーザーは回答の関連性、コンテキストの関連性、忠実性などのメトリクスを監視し、パフォーマンス低下の根本原因を特定可能。今後計画されている機能にはエージェントのオンボーディングリスク評価、エージェントの監査証跡、エージェントツールカタログなどがあり、これらは米国時間6月27日より利用可能になる予定だという。
3, 即時利用可能なコンプライアンス機能
IBM watsonx.governance Compliance Acceleratorsは、世界中の規制、基準、フレームワークの中から厳選されたものをあらかじめ搭載して提供するため、ユーザーは自らのAIユースケースに関連する規制を特定してマッピングできるという。主要な規制として、EU AI規則、米国連邦準備制度理事会(FRB)のSR 11-7、ニューヨーク市地方条例144などに加え、ISO/IEC 42001などのグローバル基準、NIST AI リスクマネジメントフレームワーク(AI RMF)などが含まれるとしている。
4, 責任をもってAIを拡張する専門知識
顧客が責任をもってAIを拡大できるように、IBMのサイバーセキュリティーコンサルティングサービスには、IBM Guardium AI Securityなどのデータセキュリティープラットフォームと、AI技術および業界に特化したコンサルティングを統合した新たなサービス群を導入している。 この新たなサービス群は、AI導入の発見や潜在的な脆弱性の特定から、AIの各レイヤーにおけるセキュア・バイ・デザインの実践、さらには絶えず変化する規制環境に対応するガバナンスの指針に至るまで、組織のAI変革を包括的にサポートするという。
さらに、AWSのユーザーにより高い価値と利便性を提供するため、watsonx.governanceがインドのAWSデータセンターでも利用可能となり、モデル監視機能も強化されたとしている。
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