放送局での業務自動化に「Gemini」が大活躍──「AI関数」によるデータ分析/アプリ開発の民主化
#5:GeminiによるGoogle スプレッドシート / AppSheet内製アプリの機能強化
機材トラブル報告を自動化 事後のデータ分析も可能に
情報の分類(Classification)
次に、放送設備の保守・運用業務で使われているAppSheetアプリを考えてみましょう。技術スタッフが中継先やスタジオで発生した機材トラブルについて、完了報告をテキストで送信します。その報告内容をAIが読み取り、「映像系トラブル(Video issue)」「音声系トラブル(Audio issue)」「伝送系トラブル(Transmission issue)」といったカテゴリーに自動で分類することも可能です。
これも「情報の抽出」と同様に、AutomationにAIタスクとして「Categorize(分類)」を追加します。基本的な設定フローは前述した「情報の抽出」と同じなため、ここでは分類タスク特有の重要なポイントに絞って解説します。分類の根拠となるテキストが入力された列(Input columns)と、分類結果を保存する列(Output)を指定します。このとき、分類結果を保存する列は、選択肢リスト形式(Enum)か、他のテーブルを参照する形式(Ref)である必要があります。さらに、「Additional instructions」に分類のルールを具体的に指示することで、より正確な分類が実現します。

図12:AIタスク(Categorize)の設定画面
[クリックすると拡大します]
AIタスクのOutput(出力) を「Return value」とすることで、後段のステップで出力結果を利用することができます。このAIによる分類結果をトリガーとして、次のアクションを自動化することも可能です。たとえば、「伝送系トラブル」と分類された報告だけを条件に、即座にマスターコントロール室の責任者へ通知メールを送信できます。
このフローにより、事後的なデータ分析が容易になるだけでなく、放送の安定運用に関わる重大なインシデントへのリアルタイムな対応が実現します。 これまで人手に頼っていた重要案件の発見と報告が自動化され、ビジネスの即時性が大きく向上します。
まとめ
本稿では、GoogleスプレッドシートとAppSheetに組み込まれた、実践的なAI活用術を紹介しました。
スプレッドシートのAI関数は、単なるデータ分析ツールであった表計算ソフトを、アイデアや文章を生み出す「創造・生成ツール」へと進化しています。AppSheetのAI活用は、専門家でなくともアイデアを瞬時に形にできる「アプリ開発の民主化」を推し進め、さらには画像やテキストから情報を読み解くAIタスクによって、「現場業務のインテリジェント化」を実現します。
これらは単なる機能追加ではありません。私たちが日々向き合っている業務の「当たり前」を変え、働き方そのものを再定義する力を持っています。これまで単純作業に費やしていた時間を、より創造的で、本質的な価値を生み出す活動へとシフトさせていく。Geminiと共に、そんな新しい働き方を始めてみてはいかがでしょうか。まずはあなたの身近な業務から、その可能性を試してみてください。
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- この記事の著者
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倉田 智(クラタ トモ)
株式会社毎日放送 放送局におけるIT人材育成・クラウド利活用推進を担当。 Google Cloud 公式ユーザー会 Jagu'e'r エバンジェリスト・GWS(Google Workspace)分科会の運営に携わる。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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