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AIが出した答えを、投資家に説明できますか? SAS中村氏が語るAI時代の意志決定リテラシー

AI時代のデータの世界観 #02 対談:SAS Institute Japan 中村洋介氏 × Quollio Technologies 松元亮太氏

第三極となったデータサイエンティストの居場所

松元データを扱う若い世代も増えてきて、ボトムアップで「こういうことやりたい」という声が現場から上がるようになりました。これ、データのガバナンスがより難しくなっていませんか?

中村難しくなっています。道具は揃った。スキルを学ぶ機会も増えた。現場がデータを扱うことも増えた。でも問題は、それが何のためなのかです。

 よくあるのは、目の前の自分の作業を楽にするためだけにChatGPTなどを使うケース。それ自体はいいんですが、企業経営はそれだけじゃないんですよ。ある現場の人が作った分析のロジックやモデルが、次のどの業務に繋がっているのか。それは何のためにやるべきなのか──そこまで踏まえてできているかが問題です。

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 元々、企業には事業部門とIT部門がありました。2010年代にデータサイエンスという領域が生まれ、「この人たちはどこに所属すべきか」という議論が起きたんです。

 事業部はデータサイエンティスト(以下DS)の言葉で要件を渡せない。たとえば、分析モデルと言っても、そのモデルの実態が何か知らない。だから「需要予測モデルを3日で作って」等、無茶を言う。でも無茶であることが分かっていない。事業予測は業務として長年やってきたからできそう、と思うけれど、データサイエンスの世界は前提やコンテキストが違うから、結果として「DSに言っても伝わらない」「DSはやってくれない」「文句ばかり言う」と関係が険悪になる。

 IT部門にとっては、データ≒データベースと捉えがちで、分析や統計は自分たちの仕事とは関係ないと思っている。だから、データベースエンジニアではないDSに対して「この人たち何やってくれるの?」とその価値が理解できず、自分たちとは違う、遠い存在と感じてしまいがち。

松元それで多くの企業がDX部門という「第三極」を作ったわけですね。

中村そうです。それがCIOに紐づくのか、COOに紐づくのか、CDOを新設するのか、立ち位置はさておき、今では第三極になっています。データ準備、モデル開発、レポート作成、UI設計など、いろいろやっていますが、問題が1つあります。誰がどうガバナンスするのか、が明確になっていない場合が多い。

 組織目標をどう設定すればいいか分からない。モデルを作った数で評価するのか? モデルが生んだROIで評価するのか? 目標が定まらないまま「データは揃えた、人も揃えた、さあ頑張れ」となっている。だから、採用計画一つとっても、適正な人数が分からない(だから予算に合わせて無軌道に採用したり、組織変革で急に人が減ったりしている)。これが今、AI時代を迎える上での企業経営における課題です。

事業とデータを繋ぐ「チャンピオン」を育てる

松元この課題に対して、中村さんはどうアプローチすべきだと考えますか?

中村答えは各社各様ですが、1つのアプローチはチャンピオンを作ることです。

 事業とデータの橋渡しができる人。理想は事業・データ・ITの三角形が繋がることですが、まずは左下──事業とデータを繋げる人を育てることから始めるべきです。

 収益性や業務といった事業の話と、データを使った判断や意志決定を行ったり来たりできる人。そういう人を1人でも作れれば、その人が自分のコピーに近い人を育て、組織に定着させていけます。

松元T型人材、ヤタガラス人材ですね。でも、ITから入るとどうしても事業が遠くなる。

中村その通りです。ITは長年コストセンターとして、いかにコストを下げるかを求められてきました。いきなり「事業価値を生め」と言われても、事業が何をやっているかも分からなければ難しい。

 だから事業とデータが分かるチャンピオンをまず育てる。データサイエンスが分かるようになれば、Pythonに触れたり、SASコードを触ったりする中で、ITのこともある程度は自然に身についていきます。

 私自身の経験を話すと、新卒でAccentureに入ったとき、私は英文科卒でJavaが何かも知りませんでした。内定後に「やさしいJava」という本が送られてきたんですが、開けることなく入社してしまい、その後の入社後研修で大変な思いをしました(笑)。

松元そうなんですか(笑)

中村ただ入社後、あるプロジェクトで先輩が、普通なら一晩以上かかる作業にマクロを作って営業分析を処理させたんです。朝起きたら作業が終わっている。それまで自分で一晩中かけてもできなかったことが、コンピューターの力で実現できると体感して、そこから興味を持って勉強しました。

 原体験が大事なんです。「Javaの本を読め」と押し付けられるのではなく、事業の中で課題に向き合い、それを「技術で解決できた」という体験をする。そういう経験をできる環境を作ることが、人材育成には重要だと思います。

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データ分析は何のためにあるのか

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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