日本企業のSIer依存に潜むAI活用の落とし穴──Databricksの「データ+AI」戦略に迫る
年次イベント「Data+AI Summit 2025」で見えた“オープン性”へのこだわりと覚悟
ベンダーロックインを防ぐ策は“オープン性”に?
もう一つ、カンファレンスを通じて強調されたメッセージが「オープン性」だ。笹氏は、日本の経営層との対話では、オープン性そのもののメリットを理解してもらえる場合はさほど多くないとしつつ、「『じゃあベンダーロックインされるのは良くないですよね』と言い換えると非常に大きな反応が返ってくる」と指摘する。
「ベンダーロックインの回避策としてオープン性があるということの理解度合いは、正直日本ではまだあまり高くないと思っています。そのあたりは、我々がもっと啓蒙していかなくてはいけない部分だと捉えています」(笹氏)
とはいえ、オープンであることの意義は徐々に日本でも理解されつつあるようだ。倉光氏は「オープンであることが、ビジネス的にリスクを減らすという解釈が、少しずつビジネスユーザーの方々にも浸透してきていると感じる」と述べた。
特に、Icebergを開発した企業を買収して、Delta Lakeと同様にApache Icebergにも投資する同社の姿勢には、オープン性を単なるスローガンに終わらせないという“相当な覚悟”が見えると笹氏は客観的に評する。顧客の利便性を最優先するという同社の強いこだわりが示されているようだ。

(写真右)同 代表取締役社長 笹俊文氏
Lakebaseがクラウド移行促進の起爆剤に
また、Lakebaseについては「顧客からの反応が最も大きかった」と倉光氏。「既存のオンプレミスデータベース運用に苦労する日本企業にとって、Lakebaseはクラウド移行を促進する起爆剤になり得る」と期待を込めた。
笹氏は「Lakebaseの真価は、AIエージェントがBtoCのシナリオで動く“次の世界”にある」との見解を示す。数百万人が同時に利用し、リアルタイムで様々なデータと連携するAIエージェントの環境では、低遅延・拡張性・バージョンコントロールが必須となる。「Lakebaseが従来のデータベースの延長線上ではない、大規模なAIアプリケーションを本番運用するための基盤として位置づけられる」とした。
日本の“データ+AI”市場を牽引するリーダーへ
こうした機能アップデートを含め、AIの活用を日本企業により浸透させていくためには、どのようなアプローチを採っていくべきなのか。笹氏は、日本企業が乗り越えなければいけない壁として、「BI(ビジネスインテリジェンス)とAIの分離」を挙げる。
たとえば、コンビニエンスストアで需要予測を行う際、BIとAIのプラットフォームが分かれていることで、昨日(BI)と今(リアルタイム分析)と明日(AIによる予測)という単なる時系列で状況を見ることにとどまっていると笹氏。「この全てを統合し、AIを特別視するのではなく、データに基づいた一連の意思決定プロセスとして捉え直すことが日本企業の課題解決につながる」と語る。
また、日本ではSIer依存の傾向がいまだ根強い中、同氏は「ベンダー側がBIとAIを分けてしまっていることが、データ活用の本質を見えづらくしている」とも指摘する。
「AIによる業務改革に本腰を入れて取り組んでいるユーザー企業は、AIが“システム納品型”ではなく、変化するデータを循環させてはじめて機能する“データ循環型継続モデル”であることを理解しています。このような企業では、内製化の意識がとても強まっていると感じます」(笹氏)
実際、米国では「チーフ データ&AI オフィサー」という肩書がちらほら出てきているという。笹氏は「バックオフィスや生産部門など全ビジネスラインのデータがAIのシナリオに絡むようになってきたことで、従来の組織体制では対応が難しくなっていることを示している。日本でも今後、こうした組織的な変革が重要になる」とし、そのためのサポートをDatabricksとして行っていきたいと述べる。
「24時間365日データとAIのことを考え続けている会社はDatabricksだけだと自負しています。日本で“データ+AI”の市場を牽引するリーダーとして、これからさらに成長していきたいと考えています」(笹氏)
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