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【中外製薬×ふくおかFG】AI時代のDX推進「実行・投資・文化醸成」の壁に、両社はどう立ち向かった?

トップダウンとボトムアップを組み合わせた、部門横断のDX推進施策を語り合う

ふくおかFGが経営層の意識転換を狙い進める「リバースメンター」制度とは?

 生成AIの普及は、従来のDX推進における構造的な課題を大きく変化させている。以前はエンジニアに依存していた開発作業が、ビジネス部門でも実現可能になったことで、組織間の壁が低くなっているのだ。

 武重氏は「ノーコード/ローコードで開発できるアプリケーションが数多く登場しており、これらをいち早く導入することで、銀行員が自らAIエージェントの作成に取り組むような事例も出てきている」と語った。この変化により、エンジニアが上流工程にシフトし、より戦略的な業務に集中できる環境が整いつつあるという。

 中外製薬でも同様の変化が起こっている。金谷氏は「ノーコード/ローコードツールやAIの力を借りて、内製開発を行える人材が増えている」と説明した。ただし、AIの民主化が進む一方で「統制の取れた活用環境の構築をどう実現するかが次のステージの重要な課題だ」とガバナンス面での課題も明かす。

 多くの壁を突破してきている両社だが、今直面している壁は何か。武重氏は、やはり投資判断の難しさを最大の課題として挙げる。従来のROIを重視した考え方を踏襲すると、スコープが小さくなってしまうが、本当に必要なのは10年後の価値を見据えたより大規模な投資だ。こうした認識から、経営層の意識転換に向けた取り組みも現在進行形で進めているという。

 その一例が「リバースメンター」制度だ。これは、役員1人にメンターとしてDX推進本部などに所属する若手社員を2人ずつ付けるという仕組み。武重氏は「私と役員が話すと、ROIや予算の話になりがちだが、将来のビジョンについては年齢の離れた若手と話す方が効果的だ」と語った。

 金谷氏は、組織間の融合をさらに深めることを最大の課題として挙げた。今まで中外製薬では、デジタル部門が各ビジネス部門の課題解決をサポートする「支援型」のアプローチをとっていたが、これからは一緒に課題を解決する「共創型」のアプローチをとっていきたいという。現時点では、両部門が協働して新しい価値を生むことができる領域はどこか、戦略フェーズからディスカッションを始めている。

 「我々はもっと事業部門のビジネスを理解しないと、デジタルで何ができるかを伝えきれません。一方で、事業部門側ももっとデジタルを理解してもらわないと何に応用できるかがわかりません。相互理解の深化が、真の価値創造につながると私は考えています」(金谷氏)

 ビジネス価値を創出するDXを実現するにあたり、壁はまだまだたくさんある。武重氏は「今はまだ壁に登っている最中であり、登っても登っても新しい壁が出てくる。登ることをやめてしまうと、それはもう後退でしかない」として、継続的な挑戦の重要性を強調した。

 続けて金谷氏は、「抱えている課題は、同業でも業界が違っても同じようなものもあるはず。その悩みを一緒に解決していくフレームワークが、突破口になる可能性がある」と情報共有や共創への期待を示した。壁に向き合い続け、その経験や知見を内外に共有していくことが、真のDX推進の原動力につながるのだ。

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森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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