SAP Concur、SAP Fieldglass、SAP Tauliaの機能強化
SAP Concur、SAP Fieldglass、SAP Tauliaについてもアップデートの紹介があった。まず、経費精算サービスであるConcurの新しいAI機能として、Receipt Analysis Agentが発表された。このAIエージェントは、単に領収書の画像から精算手続きに必要な情報を抽出するだけではない。マップ、ベンダーのデータベース、Webサイトの検索など様々なツールを活用し、画像情報に欠けていて、かつ手続きに必要な情報を自動的に補完してくれるのである。
また、不正の疑いのある領収書を特定するAI-Generated Receipt Checker、予算とポリシーに基づく出張予算の効率的な見積もりを支援するPre-Spend Plannerにも新機能が導入されることが明らかになった。
また、ConcurとAmerican Express Global Business Travel(Amex GBT)とのパートナーシップによる共同開発ソリューション「Complete」も発表された。旅行予約からサービス提供、決済、経費精算までエンドツーエンド(E2E)のプロセスをサポートするソリューションで、ユーザーは600社超の航空会社と200万軒超のホテルの情報にアクセスできる。旅行の予約は、断片化された情報の統合を得意とするAIエージェントの代表的なユースケースの1つだ。AIからの旅程の提案、出張中にトラブルが発生した場合の調整、戻ってからの精算手続きまで、すべてが単一のユーザー体験で提供されることで時短効果が期待できる。
次に、外部人材の調達をサポートするFieldglassで、職務記述書を自動分析する機能が発表された。AIが職務の遂行に必要なスキルを分析し、契約社員のスキルに基づく空きポジションとのマッチングを容易にする機能だ。また、SOW(Statement Of Work:作業範囲記述書)の自動作成機能も提供開始された。既存のPDF形式のSOWファイルをFieldglassにインポートすると、AIがファイルの中の関連データを抽出し、SOWドラフトを自動的に作成してくれる。採用担当者は内容を確認するだけで済むため、これも時短効果が期待できる。
さらに、運転資本管理を支援するTauliaについては、決済時にバーチャルコーポレートカードを利用することで、サプライヤーには即時支払いを実行しつつ、自社のキャッシュアウトを後ろ倒しにできるメリットがある点が説明された。規定のカードを利用することで、経費精算処理の簡素化やコントロールの強化だけでなく、運転資本の改善効果が期待できる。このバーチャルカードはAribaに組み込まれているため、可視化された支出パターンからキャッシュフロー予測の精度が向上する効果も得られる。Tauliaはあらゆる市場、通貨に対応しており、AIを活用したよりスマートな運転資本管理のための基盤を提供してくれる。
この記事は参考になりましたか?
- 冨永裕子の「エンタープライズIT」アナリシス連載記事一覧
-
- 調達部門の働き方を変える“次世代のAriba”、人とAIが協働する調達プロセスの在り方とは...
- なぜSalesforceはSlackを全てのAIの起点にするのか ── 「エージェンティッ...
- 「企業内消防隊」を救え──SAPが挑む、混乱するサプライチェーンの即応最適化
- この記事の著者
-
冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
