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ビジネスメタデータ整備は「大きな戦略、小さな実行」で “AIレディ”な環境実現に向けた具体的ポイント

AI活用の効果を実感できている企業はわずか10%……自社の暗黙知をデータ化する際に気を付けるべき点

ビジネスメタデータ整備は「スピーディー」に 推進時に気を付けるべき要点

 ビジネスメタデータは、データ項目の論理名や定義といった基本情報に加え、具体的なビジネスルールやセマンティック(意味論的)な定義までを含む。たとえば小売業の顧客行動データの場合は、オンライン購入後の店舗受取が48時間を超過した際のフォローコールの実施や、顧客満足度調査の対象とするルールなどを、自然言語として定義する。

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 ここで重要なのは、これらの暗黙知的な情報を、システムが実行できる「機械可読な形式」、たとえばルールエンジン向けの記述などに変換する必要がある点だ。阿部氏は「AI時代のデータ活用には、セマンティックレイヤー(意味の統一)の整備に加え、人間の暗黙知をAIが理解できる形式へと変換する必要がある」と説明する。曖昧な指示を明確なビジネスルールに変換し、それを機械可読な表現に落とし込むことで、AIが正しく動けるようになり、人間の判断を支援、代替できるようになるのだ。

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 ビジネスメタデータの有無は、企業の生成AI活用において決定的な違いをもたらす。たとえば、RAG(検索拡張生成)を用いた検証事例では、テクニカルメタデータのみを利用した場合、AIがデータの構造を認識するだけで、ビジネス的な意味合いは理解できない。そのため、アクセスできない情報に基づいてしまい、ハルシネーションを起こす可能性がある。追加の質問に対しても、ビジネスに役立つ回答を得ることは難しい。

 一方で、ビジネスメタデータを加えたRAGでは、AIが提供されたデータを正しく理解し、分析に必要な情報を自ら探索できる。結果として、分析結果だけでなくアクセス権限や利用意図、生成の背景といったコンテキスト情報までを付加した、信頼性の高い実行可能なインサイトが得られるのだ。「どれほどプロンプトに工夫を凝らしても、その後ろに用意されたメタデータ以上の結果は出せない」と阿部氏は指摘する。

 ビジネスメタデータが整備されることで、現場の業務スピードは大きく向上する。たとえば、品質トラブルの原因特定に人海戦術で2週間かかっていたものが、データ解析の結果、2日へと大幅に短縮される効果が生まれるといった例が示された。

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 このビジネスメタデータ整備には、速いスピードが求められる。IoTのセンサーデータや画像・動画データなど、実データ量が指数関数的に増加し続けることに対し、ビジネスメタデータの整備は、特に初期段階では人手に頼る部分が大きく線形的にしか増加が進まないため、時間差によるギャップが生まれるという。

 このギャップを埋めずにいると、意味が不明確で使われないデータが大量に蓄積されてしまい、取り返しのつかない状況に陥る。反対に、いち早く取り組みを開始した企業は、部分的なメタデータ整備の自動化ができる段階に入り、競合との差をますます広げられるだろう。

 「ビジネスメタデータは、データの業務的意味を明確化し、認識齟齬を防止する“翻訳者”であり、膨大なデータから必要なデータへの道筋を示す“案内人”でもあります。さらに、データの信頼性を担保し、不適切な使用を防止する“品質管理者”としての役割も果たすのです」(阿部氏)

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メタデータ整備は「Think Big」と「Start Small」で進めるべし

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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