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顧客マスタデータをクレンジング率「99.7%」で維持するNEC、AIエージェント活用も進む同社の挑戦

NEC独自の「勝ちパターンマスタ」整備、重要となる3要素

今後はAIによるプロセスの自動化へ 非構造化データも有効活用

 既にアカウントプランニングAIエージェントの利用は進んでおり、各営業社員の日常に組み込まれているという。原田氏は、AIを活用して将来的にやりたいことのひとつに、「勝ちパターンマスタの更新の自動化」を挙げた。勝ちパターンマスタの中身のナレッジは次々に増えているが、その登録は現時点でマネージャーの手作業に依存しているとのことだ。マネージャーたちもナレッジの充実の意義は理解しているが、忙しいと後回しになる。原田氏自身も、やってみて負荷の大きさを実感したという。

 代わりに考えたのが、次のようなやり方だ。まず、スマホで会議の会話を録音しておき、AIに文字起こしをさせた後、要約を作らせる。ここまでは一般的な生成AIツールでもできることだが、問題はナレッジとして登録すべき情報を要約に入れてくれるとは限らないことだ。そこで、AIが必要な情報をSalesforce内の所定の場所に半自動的に格納してくれる仕組みを構築することにした。「既にPoCは終わっており、現時点で入力の精度は約70点程度だが、最終確認を人間が行うと考えると既に実用レベルに達している」と原田氏は述べる。

勝ちパターンマスタの更新でAI導入を検証中

出典:NEC(クリックすると拡大します)

 さらに今後に向けて、同氏が意欲を示したことは大きく2つある。1つは、AIを使ったプロセスの自動化を進めることだ。たとえば、顧客マスタの名寄せのように、今も人に負荷がかかるプロセスは残っているため、適宜自動化を進めていくという。もう1つは、構造化データだけでなく非構造化データを活用することだ。構造化データだけがMDMの対象とは限らない。特に、これから会話のデータの活用が進むと、非構造化データからコンテキストを抽出することが必要になってくる。

 「ある顧客に提案した内容、そしてそれに対する反応、営業の対応などを、やり取りの履歴も含めて活用できるようにしたいです。営業だけでなく、AIエージェントも活用できるようにしていければと思います」(原田氏)

 NECでは、会社として「顧客情報は大事な資産である」という認識を長年にわたり共有してきた。そして、それが経営の意志として、システムに実装されている。顧客マスタについて、少ない人数ながらも専任の体制で品質を維持しているのは、「コストをかけてでも整備する必要がある」という思いがあるからだ。AIエージェントの有望なユースケースを探している日本企業は多いが、足元のマスタデータの品質が満足できる水準かを確認してほしい。その結果は、今後のAI活用の加速の実現可能性を左右することになるだろう。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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