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IBMが「TechXchange」で示したハイブリッドクラウド&AI戦略──Anthropic連携と4層テクノロジー基盤

IBM TechXchange 2025/TechXchange Summit JAPAN 2025 レポート

日本のTechXchangeは、戦略を“実装できる人”を育てる場

 4層構造で示した技術戦略も、最終的に顧客の文脈に合わせて設計し、実装し、運用まで回すのは現場の技術者だ。TechXchangeでは、知識を一方的に受け取る場ではなく、触って体験し、議論して、自分の言葉で持ち帰る学びを軸に据えるという。

 「TechXchange Summit JAPAN 2025」の企画・運営を担ってきた3名のキーメンバーに、その狙いを聞いた。

(左より)日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 カスタマー・サクセス事業部 プリンシパル・カスタマー・サクセス・マネージャー 大西彰氏/同 テクノロジー事業本部 テクニカルリーダーシップ事業統括 執行役員 基調講演ナビゲーター 大久保そのみ氏/同 クライアント・エンジニアリング プリンシパル・ソリューション・アーキテクト 野村幸平氏

 大久保そのみ氏は、技術者の学び方そのものが変わってきたと語る。進化が速い今、研修コースを受けて知識を消化するだけでは追いつかない。進化と同じスピードで触って体験し、「自分はこう考えたんだけど、どう思う?」と共有し合う。TechXchangeは、その学び方に合わせて場を設計してきたという。

 企画から当日の運営までを専任チームに切り出すのではなく、日頃顧客と向き合う技術者自身が担う点もその延長線上にある。セッション後に講師へ直接質問できる「Ask the Speaker」エリアでは、一対一の質疑にとどまらず、周囲の参加者を巻き込んだ議論が自然に立ち上がる。夕方にはハッピーアワーセッションや展示も組み合わせ、会話が続く導線を用意した。

 大久保氏は、この「対話の温度」をサミット当日だけのものにしないことも重視する。年1回のサミットを核にしつつ、テーマ別の小さな集まりも含め、もっと頻繁に会える機会を増やしていきたいという。

 登壇側として関わる野村幸平氏は、プログラム設計ではトレンドへの感度が要になると語る。2023年は生成AI、2024年はオープンなAI、2025年はAIエージェントという流れの中で、参加者がいま何を求めているかを見極め、技術の全体像を「理解の地図」として提示することを意識した。

 重要なのは「これがIBMのアーキテクチャ」と一つに固定することではなく、顧客が描きたい絵を丁寧に聞きながら、下書きから一緒に作っていくことだという。PoCが進むほど本番実装の問いが強まり、そこで全体アーキテクチャが論点になる。TechXchangeは、その勘所を全体像と具体論を行き来しながら共有する場として位置付けられている。

 大西彰氏は、理解を前に進めるには体験が欠かせないと語る。説明を長く聞くより、短いデモを見れば何となくわかることも多い。だからこそTechXchangeでは、各セッションでデモを重視し、参加者が動く姿を通じて技術の手触りを確かめられるようにしているという。

 今回のTechXchangeで見えたのは、生成AIを"試す"段階から"本番で回す"段階へ移る中で、企業ITの論点を落とさずに設計するための提案である。Project Bobは要件整理からレビューまでをつなぎ、工程全体の手戻りを減らす方向性を示した。Groq連携はマルチエージェントの推論回数増加が招く遅延を抑え、設計自由度と体感品質の両面に効くことを狙う。IBMが強調した4層インデックスは、PoC後に避けて通れない全体実装(連携・運用・統制)のための方法論とも言えるだろう。

 生成AIの可能性に期待が高まる一方で、多くの企業が直面しているのは「PoCはうまくいったが、次にどうすればいいのか」という現実的な問いである。IBMの提案は、その問いに対する一つの答えとして、技術単体ではなく、既存システムとの共存を前提とした全体設計の重要性を示している。

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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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