移行か?継続か?──VMwareの完全リプレイスは不可能だからこそ押さえたい“現実解”への移行ステップ
ユーザー企業を悩ませる“苦渋の選択”にガートナーアナリストが送るアドバイス
2023年11月にBroadcomがVMwareの買収を完了してから2年の歳月が流れた。この間、日本企業を含むVMwareのユーザー企業はライセンスコストの大幅増という難題に向き合わざるを得なくなり、VMware環境の維持か、あるいは他のプラットフォームへの移行か、その選択に今も悩んでいる企業は少なくない。一方、BroadcomはVMwareの買収完了から3年を目処に大多数の顧客をメインのサブスクリプションモデル「VMware Cloud Foundation(VCF)」へ移行させることを目指してきたが、2026年を迎えた現在、同社はその戦略をより一層加速させていくことは疑いない。この状況は既存のVMwareユーザー、特に他環境への移行を検討しているユーザー企業にとっては、悩んでいる時間はあまり残されていないことを意味する。
「VMwareを代替できる単一のプラットフォームはない」
「現時点でVMwareを1対1でリプレイスできるテクノロジーは存在しない。VMwareのリプレイスはエンジニアリングに関する取り組みであり、どのような選択をしても時間/資金/労力の面で多額の投資が必要となる」──2025年12月、ガートナージャパンが都内で開催した「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス」に登壇したGartner VP Analystのポール・デローリー(Paul Delory)氏は、筆者とのインタビューの場でこう明言した。
VMwareに替わるインフラプラットフォームを検討している企業にとってはいささかショックなフレーズではあるが、デローリー氏はこの前提を正しく理解していないと移行プロジェクトを円滑に進めることは難しいと指摘する。
「最大のポイントは、VMwareの代替テクノロジーが低価格で十分に優れているかどうかにある。VMwareからの移行を検討せざるを得ない理由はライセンスコストの高騰で、一部の企業を除いて到底受け入れられる金額ではないことは明白だ。にもかかわらず、VMwareを完全に代替できる単一の魅力的なテクノロジーは現時点では存在しない。だからこそ移行にあたっては、ステップバイステップでプランを実行していく必要がある」(デローリー氏)
Gartner, Inc. VP Analyst ポール・デローリー(Paul Delory)氏
医療関連企業のインフラエンジニアだった経験を活かし、仮想化インフラやデータセンターインフラ、クラウドエンジニアリングなどの分野で顧客に対し深い技術的専門知識を提供している。現在はGartner for Technical Professionals(GTP))リサーチバイスプレジデント 兼 アジェンダマネージャを務める
ではVMware環境からの移行にあたって、企業はどんなステップを踏んでいけば良いのだろうか。今回はデローリー氏へのインタビューをもとに、代替プラットフォームの選び方や移行作業における留意点、将来の保守計画などについて考察する。
ライセンス体系の変更で、ユーザーから寄せられる悲痛な声
移行プロジェクトの計画の前に、VMwareのユーザー企業が直面している問題をあらためて整理しておきたい。2年前の買収完了およびライセンス体系の変更で、VMware製品の提供は基本的に4つのサブスクリプションモデルに集約され、そのうち一般的な企業が利用可能なのはフルスタックの「VMware Cloud Foundation(VCF)」と、ネットワーキング(NSX)を含まない「VMware vSphere Foundation(VVF)」の2モデル。サブスクリプションの期間は1年または3年で、従来まで提供されていた永続ライセンスは撤廃されている。
このライセンス変更が顧客にもたらした混乱は単純なコスト増の問題だけではない。デローリー氏は、Gartnerの顧客から寄せられたいくつかの現実的な声を紹介した。
- 一般的なVMwareの顧客企業は従来に比べて3~4倍のコスト増に直面している。VCFの価格は3年のサブスクリプションで「1コアあたり年間350ドル、最小料金は16コア/ソケット」、NSXから削除されたマイクロセグメンテーション機能(vDefend)を利用するには「1コアあたり年間120ドル」の追加費用が必要
- BroadcomはVCFとしてのバンドル購入を強く推奨(既存のvSphereライセンスを重視していない)
- VMwareの顧客企業は「Strategic」「Corporate」「Commercial」の3セグメントに分類されるが、最上位のStrategicに属する企業(現在は1,000社未満)が利用できるのは基本的にVCFのみ。なお、BroadcomはSIerやVARを通してではなく、顧客との直接取引を望む傾向にある
- 利用可能なライセンス(VCFまたはVVF)はリモートオフィスやブランチオフィス、エッジロケーションに導入するには高額すぎる
- 長らくVMwareを利用してきた顧客はサポートの質の低下と、今後のさらなる価格上昇を懸念している。にもかかわらず、魅力的な単一のVMware代替テクノロジーはほとんど存在しない
VCFの最新版は2025年6月にリリースされた「VCF 9.0」で、モダンプライベートクラウドプラットフォームとして高い評価を受けており、既存ライセンスからVCFへのアップグレードを決めた企業も多く存在する。だが、一般的な企業にとってインフラのライセンスコストが数倍に跳ね上がるという状況は経営的にも受け入れがたく、さらに「必要のないソフトウェアをバンドルで購入させられること」に対する抵抗感は大きい。
しかし、デローリー氏が言うように「現状では単一のVMware代替テクノロジーがない」という状況から、ユーザー企業の選択は非常に悩ましいものになる。なお、Gartnerは顧客の現状を分析した結果、「ほとんどの顧客は短期的にはVMwareを完全にリプレイスすることはできない。また、2028年までにエンタープライズグレードのVMwareワークロードの約35%が他の環境に移行する」という予測を公表している。
出典:Gartner(2025年12月)
VMwareインフラの移行に関するガートナーの予測:2028年までにエンタープライズグレードのVMware顧客の70%が彼らの仮想化ワークロードの50%を(VMwareから)移行。エンタープライズグレードのワークロードの35%が移行
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五味明子(ゴミ アキコ)
IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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