「古いオンプレミス」ではなく、最先端のプライベートクラウドへ
「オンプレミス」というと、一昔前のレガシーなシステムを想像するかもしれない。しかし、Mattermostの世界観は一線を画す。
ティエン氏は、「かつての使いにくい『オンプレミス・ソフトウェア』ではありません。Kubernetesなど最新のコンテナ技術を用い、自社のプライベート環境内にAWSやAzureと同じようなクラウドネイティブな環境を構築する。われわれは、これを『Bring Your Own Cloud』と呼んでいます」と説明する。
また、昨今の生成AIブームもMattermostの追い風だ。企業や政府がNVIDIA H100などを購入し、自社専用のAIモデルをオンプレミスで構築する動きが加速している。「機密情報を扱う組織であればあるほど、ChatGPTのようなパブリックなAIにデータを渡せません。自社のデータセンター内で動くAI、そこで働く人間をつなぐためのインターフェースが必要です。Mattermostは『AIと人間のコラボレーション』を、閉じた安全なネットワーク内で実現できる唯一のプラットフォームなのです」と主張する。
もちろん、Mattermostはすべてのクラウドツールを置き換えるようなものではない。ティエン氏は、SlackやMicrosoft Teamsなどとの「併用・統合」も推奨する。「日常的な業務や、社外との一般的なやり取りにはTeamsを使い、絶対に漏洩してはならない機密情報の扱いや開発・セキュリティ運用(DevSecOps)、そして有事の際の通信にはMattermostを使う。Mattermostなら、これらをシームレスに連携させることも可能です。重要なのはデータの重要度に応じて、適切な場所を選ぶことです」と話す。
ランサムウェアによるシステムダウン、自然災害による通信途絶、地政学リスクによるサービス遮断。これらの「想定外」と考えられていたことが、今や「想定内」として対処することが求められる。確実な対処のために、通信手段を自らの手に取り戻す。クラウド全盛時代の今だからこそ、逆説的に高まる「つながり続けるためのローカル基盤」への回帰が求められるだろう。Mattermostの日本市場での展開は、日本のITセキュリティにおける「最後の砦」を強化する、重要なピースとなるのかもしれない。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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