日本企業が目指すべきは「理想の追求」ではなく、「既存資産とのハイブリッド」
先述した7つのトレンドに加え、日本を含むアジア太平洋地域には独自の特徴が見られる。UiPathのレポートでは、同地域では単なるテクノロジーの消費者から「開発者・輸出者」へと変貌を遂げつつあると報告された。
日本は、内閣府による「AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」などがイノベーション重視の姿勢を打ち出しており、AI技術の研究開発と活用を後押ししている。また、深刻な労働力不足を背景に、AIエージェントを労働力として組み込む「エージェンティック・ワークフォース」への移行も必然的に進むだろう。
経済産業省による、2040年の職種別の就業者数推計では、2040年までにAI・ロボティクス人材が約498万人不足すると予測されている。このことからも、日本ではAIエージェントをいかに速く導入するかだけでなく、「いかに責任をもって、人と協働させるか」の視点が求められていく。夏目氏も、日本企業のガバナンスへの関心の高さや、現場主導での業務改善の強みがAIエージェントの活用で優位に働くと示唆する。
UiPathが描く「自律的なエージェント群が相互連携し、経営判断を支援する」というビジョンは魅力的だ。しかし、現場のDX推進担当者の視点に立てば、全社規模でのコマンドセンター確立、ガバナンス・アズ・コードの実装は、技術的にもコスト的にも極めて高いハードルだろう。
多くの日本企業にとって、今必要なのはトレンドを鵜吞みにした大規模な刷新ではない。むしろ、既存資産であるRPAやAI-OCRなどと、特定の判断業務を担うAIエージェントを適材適所で組み合わせる「ハイブリッド戦略」こそが、実利的かつ現実的な解となるはずだ。
具体的には、紙帳票のデータ化などの“入力”は実績のあるAI-OCRが担い、そのデータを基にした複雑な判断・推論にのみAIエージェントを適用する。そして、最終的なシステム入力や通知という定型処理は、安定稼働が保証されたRPAに任せる。
こうした構成であれば、プロセスがブラックボックス化しやすいAIのリスクを、確実性の高い既存技術で前後から挟み込む形で制御できる。「脳(AIエージェント)」を「目(AI-OCR)」と「手足(RPA)」の中に正しく組み込む。これこそが夏目氏の説く、成果の大きい領域で迅速にROIをたたき出すための、日本型オーケストレーションとなりそうだ。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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