クラウドは雲を掴む話から顧客のリアルな課題解決の手段へ
― 日立が提供する日立クラウドソリューションHarmonious Cloud(ハーモニアスクラウド)の中身をお伺いする前に、日立は「クラウド」をどう捉えているのか、まずそこからお伺いします。
クラウドは、大企業だけでなく中堅・中小企業にまで市場が広がりつつあります。大企業においては、企業内で稼働している何千台ものサーバーを集約し、効率化することがクラウドの役割だと考えています。一方で、これまで大量のサーバー、ストレージ、ネットワーク機器などを導入していない企業においては、必要なときに必要なだけITをサービスとして提供するというのが、クラウドの役割だと考えています。最近は、色々な企業規模のお客様から数多くのお問い合わせをいただいており、トータルではクラウドはかなり大きな市場になると考えています。
パブリック・クラウドだけでなくプライベート・クラウドとの融合が必要
― 一方で日立はサーバーやストレージ、ネットワーク機器なども販売しています。クラウドによって、こうした既存のビジネスが侵食されるという心配はないのでしょうか。
クラウドは、既存システムを侵食するものではなく、既存システムの発展形であると考えています。クラウドといえば、パブリック・クラウドについての話が多く聞かれますが、我々のお客様、例えば金融業界、製造業などの大手の企業からは、プライベート・クラウドの構築をサポートしてほしいというリクエストを数多くいただいています。
お客様情報、金融情報など自身のコアコンピタンスについて、従来のメインフレームやUNIX、Windowsなどを利用してシステム構築していた部分をプライベート・クラウド化し、自分たちで発展させていく意向を持っています。そのような意味でも、プライベート・クラウドが重要だと認識しています。プライベート・クラウドの構築には、当然ながら弊社のサーバー、ストレージ、ネットワークなどの製品も利用しますし、システム導入の経験に基づくノウハウも必要です。これまで培ってきた技術やノウハウが、お客様に適したクラウドの構築には必要不可欠です。
自社のコアでない部分、コミュニケーションツールやメールなどには、パブリック・クラウドの利用は有効です。しかしこれからは、パブリック・クラウドだけではなく、社外に出せるシステムはパブリック・クラウド、出せないシステムはプライベート・クラウドへと使い分けることが必要になっていくと考えます。
―日立のクラウド事業戦略とは、そうしたパブリック・クラウド、プライベート・クラウドの両方に関わる戦略なのでしょうか。
クラウドは、複数のお客様で共有されるパブリック・クラウドと、お客様自身がコアとして持つプライベート・クラウドが存在し、これらのクラウドを橋渡ししていく必要があります(図)。そして、この2つをハイブリッドで繋げていくこと、それらをトータルで実現していくことが、日立のミッションであると考えております。我々はメインフレームや、UNIX、Windowsもやっており、SI の実績もあります。その上でクラウドも提供しています。こうした様々な技術や製品を組み合わせることが、日立が最も力を発揮できるところだと思います。クラウドを通して、日立は従来のSIにはないような付加価値を、お客様と一緒に創っていこうとしているのです。
クラウドというとコスト削減ばかりが着目されがちですが、クラウドによって削減された人材や運用コストを、新規ビジネスの投資へ繋げることが企業の成長には重要です。日立はこのようなことも含めてお客様と一緒に考えていきます。
また、日立には、多くのパートナーもいます。今までアプリケーションの提供をビジネスとしていたパートナーは、クラウドの時代にどうあるべきか、クラウドの波をどう乗り越えていくか悩んでいます。こうしたパートナーにも、日立のクラウドをプラットフォームとして活用していただき、早く、適正な価格でサービスを提供できるように協力させていただきたいと考えています。実際、日立のクラウド基盤の上にパートナーのアプリケーションを搭載し、SaaS型でエンドユーザーにサービスを提供するといった事例が増えてきています。
―日立グループには複数のIT 関連の企業があり、それぞれクラウドを提供していると思いますが、全体の整合性はあるのでしょうか。
2010 年4 月から日立グループの体制を強化し、これまでの各社のブランドを活かしつつ、Harmonious Cloudという統一ブランドでクラウドサービスを提供しています。大事なのは、お客様から見た視点で考えること。日立グループ各社が個別に実施するのではなく、グループで、お客様にとって最適なソリューションを提供していく。この動きを加速していきます。