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週刊DBオンライン 谷川耕一

「ミュトス」の出現が、日本の能動的サイバー防御を変える──図らずもつかんだ“世界先行”のシナリオ

アジア太平洋地域の「アクティブ・ディフェンス」を知る、専門家に訊く

日本は「AI時代の能動的サイバー防御」を先駆けて実現できるのか

 能動的サイバー防御の法制化という国家レベルの動きと、フロンティアAI「ミュトス」の登場という技術的なインパクトが、日本においてほぼ同じタイムラインで交錯している。これは結果として、日本を「AI時代の能動的サイバー防御」のあり方を早い段階で具体化せざるを得ない、先行的かつユニークな立場へと押し上げることになった。

 もっとも、今回の政府の素早い対応は、ゼロから突然生まれたものではない。幸いにして日本では、能動的サイバー防御の法制化が先行して昨年までに進み、その運用を支える組織・体制の整備が既に始まっていた。ミュトスへの対応は、こうした準備中の枠組みを前提に、そのスケジュールを前倒しする形で加速できた側面がある。また、慎重な議論を経て、通信傍受に関する一定の法的枠組みが整備されていたことも、今回の対策を実務レベルに落とし込む上で重要な土台となった。

 日本独自の極めて慎重な法制度設計、すなわち個人のプライバシーや通信の秘密を守るためのブレーキを用意しつつ、同時に最先端のAI技術を防御プロセスに組み込んでいく「アクセル」をどこまで踏めるのか。この官民が一体となった模索のプロセスそのものがサイバーセキュリティの未来における、国際的なスタンダードを探る実験場となりつつある。

 もちろん、これからのサイバー防御は単一の国家・組織に閉じた取り組みでは成立しない。通信事業者やクラウドプロバイダー、そしてセキュリティベンダーが政府とより密接に連携し、強固なエコシステムを形成していくことが国家、ひいては企業のデジタルレジリエンスに直結する。

 AIによって新たなリスクと機会が同時にもたらされている今、この変化の波を危機とするか、あるいは次世代の強固なディフェンスモデルを世界へ示すための好機とするかは、官民連携のスピード感と、具体的な実践および継続的な検証にかかっているだろう。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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