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EnterpriseZine Press

AI時代「アート思考」への転換が重要なワケ 山口周氏が語るロジカル思考の限界とリーダーに必要な思考力

「正解」に囚われて失敗した日本の携帯電話産業から学ぶ、マインドの変え方

解決すべき問題が枯渇している今、どこに課題意識を見出すか

 この変化がドライブしている要因として、山口氏は「正解を出していれば価値を生み出せた時代から、新しい問題を提案しないと価値を生み出せない時代への変化」を挙げる。そのキーワードとなるのが、「問題の希少化」と「正解のコモディティ化」だ。

 経済学の根本的な原理として、「過剰なものの価値は下がり、希少なものの価値は上がる」という法則がある。現代社会においては、世の中のあらゆる問題に対して、テクノロジーや論理的思考によって導き出された「正解(ソリューション)」が過剰なまでに溢れかえっている。結果として正解の価値は暴落し、逆に「何が問題なのか」を見出すこと自体の価値が高まっているのだ。

 先進7ヵ国(G7)のGDP成長率の推移を見ると、10年単位で平均したG7の経済成長率は、1960年代の5.55%をピークに、70年代、80年代、90年代、2000年代、2010年代と、一度も前10年を上回ることなく下がりつづけている。現時点(2026年)におけるデータ平均は0.8〜0.9%の間に落ち着いており、まるで飛行機が軟着陸するかのように、漸近線に近づいている状態だ。

 1990年代以降、コンピュータの普及、インターネットの拡大、スマートフォンの登場、そしてAIの台頭と、劇的なテクノロジーの進歩が起こっているにもかかわらず、なぜ生産性の関数である経済成長率は下がりつづけているのか。山口氏の答えは明快で、「問題がなくなってきたから」だ。

 昭和の時代には、寒さの中で洗濯をする辛さ、食べ物の保存の難しさなど、誰もが共感できる分かりやすい問題が社会に溢れていた。それに対して企業は、洗濯機、テレビ、冷蔵庫といった正解(ソリューション)を提供し、価値を生みだせた。しかし現在、日本の生活者の8〜9割が「生活の中で特に不便を感じることはない」と答えている。物質的なユートピアが実現したがゆえに、その先にどのような社会や生活を望むかという「ありたい姿」をイメージできなくなっているのだ。

 企業やビジネスパーソンのマインドは依然として20世紀型の「問題を解決するマインド」のまま固定されているが、社会はすでに「解決すべき問題が枯渇した状態」にある。このマインドのギャップが、様々な業界で悲劇を生み出す原因となっている。

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「正解」に囚われたことで起こった日本企業の失敗

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奥谷 笑子(編集部)(オクヤ エコ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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