AI時代「アート思考」への転換が重要なワケ 山口周氏が語るロジカル思考の限界とリーダーに必要な思考力
「正解」に囚われて失敗した日本の携帯電話産業から学ぶ、マインドの変え方
「正解」に囚われたことで起こった日本企業の失敗
山口氏は、前ページのマインドから変わらないまま20世紀型の戦い方を続けた結果、壊滅的な打撃を受けた典型例として「日本の携帯電話産業」を挙げる。
2007年当時、日本国内で販売されていた主要な携帯電話の多くは、どれも似通ったデザインをしていた。上下の2つ折り構造、上部に大きな液晶画面、下部にテンキー、中央にスクロールボタンという決まりきった様式のなかに、各社の製品が埋没していたのである。なぜここまで似通った製品ばかりになったのかといえば、それが市場調査を重ねて導きだされた“正解”だったからだ。優秀な人間が集まり、市場調査の結果を論理的に分析すれば、自然と同じ正解へとたどり着く。
しかし、そこに異なる角度からアプローチしたのがAppleのiPhoneだった。Appleは市場調査を行わない会社として知られている。同社は“外側”に答えを求めるのではなく、自分たちの“内側”に潜りこみ、「我々はどんな変化を世の中に起こしたいのか」「我々がワクワクするものは何か」を突きつめた。まさにアーティストが作品を作るようにして生みだされたiPhoneの登場により、わずか10年の間で、5兆円規模を誇った日本の携帯電話産業は事実上消滅してしまったのだ。
「優秀な技術者を集め、優秀なマーケティングプランナーを集め、市場調査を行い、出てきた結果を統計的に正しく分析して、実直に、誠実に、顧客の望むものを作った。日本企業は、どこも間違っていないんです。それにもかかわらず、産業は10年で消滅してしまった。これこそが、時代が変わったのにマインドが変わらないままビジネスを続けていることの怖さです」(山口氏)
市場に溢れる声に耳を傾け、他社と同じベンチマークを行い、論理的な正解を追い求めた結果、すべての企業が同じ場所に並び、最終的には市場そのものを丸ごと失うという「正解の罠」。この手痛い教訓は、現在のあらゆるIT・テクノロジー産業にもそのまま当てはまる。
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