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AI時代「アート思考」への転換が重要なワケ 山口周氏が語るロジカル思考の限界とリーダーに必要な思考力

「正解」に囚われて失敗した日本の携帯電話産業から学ぶ、マインドの変え方

「正解の罠」からの抜け出し方 IKEAの成功事例

 では、問題を自ら作りだし、価値を創出するとはどういうことなのか。山口氏はその具体的な実践例として、IKEAがイスラエルで展開したプロジェクト「ThisAbles」を紹介した。

 上記プロジェクトのプロモーション動画は、脳性麻痺を抱える男性が、自宅の家具が障がい者用ではないために日常生活で不便を強いられている現状を語るシーンから始まる。彼は「普通のソファに座りたいが、一度座ったら自力で起きあがれなくなるのが怖い」という恐怖を抱えていた。世界人口の10%以上は何らかの障がいを抱えて生きているが、従来の障がい者用家具は極めて医療的で、デザイン性に乏しく、価格も高価なものが多かった。

 IKEAはこの課題に対し、既存の自社家具にアドオンすることで、障がいを持つ人々でも簡単に利用できるようにする機能拡張パーツを開発。たとえば、ソファの脚を高くして立ち上がりやすくするパーツ、ベッドの脇に杖を固定するホルダー、キャビネットの扉を腕全体で簡単に開けられるようにする巨大なスイッチなどだ。これらのパーツのデザインデータはすべてウェブサイト上で無料公開され、世界中の誰もが3Dプリンタを使って自宅で出力できるようになっている。

 この取り組みは、障がいを持つ当事者たちに喜びをもたらしただけでなく、IKEAのブランド価値を高め、結果として該当する家具の売上を3割増加させるという商業的な成功も収めた。山口氏はこのプロジェクトを「DXとテクノロジー利用における見本のような事例」と語る。

独立研究者/株式会社ライプニッツ 代表 山口周氏

 ここで重要なのは、IKEAが使った3Dプリンタやデータ共有などの技術は、決して同社独自の秘密兵器ではないという点だ。どの競合企業でもアクセス可能な汎用的なテクノロジーだが、日本の他の家具メーカーがこれを実現できなかったのはなぜか。それは「問題を設定できなかったから」である。

 障がい者は不便な家具を我慢して使うのが当たり前という現状に対し、「そんなのはおかしい。障がいの有無にかかわらず、誰もが自分の気に入った家具に囲まれて暮らせる社会こそが良い社会ではないか」というビジョンを描いたからこそ、この問題を発見できた。

 問題とは、ありたい姿と現状のギャップによって定義される。世の中の多くの人が現状を「仕方ないもの」として受けいれ、諦めているなかで、自らの美意識や倫理観に基づきあるべき姿を構想する。この「問題を作り出す力」こそが、これからのビジネスにおいて重要となる能力であり、それを支えるのが“アート思考”だ。

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生成AIの台頭で、単なる“未来予測”は意味をなさなくなる

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奥谷 笑子(編集部)(オクヤ エコ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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