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AI時代「アート思考」への転換が重要なワケ 山口周氏が語るロジカル思考の限界とリーダーに必要な思考力

「正解」に囚われて失敗した日本の携帯電話産業から学ぶ、マインドの変え方

生成AIの台頭で、単なる“未来予測”は意味をなさなくなる

 現代のビジネスにおいてアート思考がさらに重要性を増している背景には、生成AIの劇的な進化もある。山口氏は、知的生産のプロセスを「アジェンダ設定」「仮説構築」「情報収集」「分析・統合」「情報出力」の5つのフェーズに分解し、それぞれのフェーズにおけるAIの得意・不得意領域を解説した。

 AIは、「情報収集」や「情報出力(テキスト化やスライド化)」は得意であり、「分析・統合」もかなりのレベルでこなすことができる。一方で、「仮説構築」は部分的にしかできず、「アジェンダ(問題)の設定」にいたっては「まったくできない」という。

 これは、今後のホワイトカラーの労働市場に大きな地殻変動をもたらすだろう。これまでコンサルティングファームなどの若手スタッフが膨大な時間をかけて行ってきた「情報を集めて分析し、資料に落とし込む」という実務はAIが最も得意とする領域であり、人間がこの部分で生みだせる付加価値は崩壊していく。一方で、最上流にある「アジェンダを設定する力」は、AIには代替できない人間の領域として残りつづける。

 また、山口氏は「予測に頼る経営」の危険性についても警鐘を鳴らす。2008年のリーマンショック直前、国際通貨基金(IMF)をはじめとする世界中の主要な金融機関やシンクタンクは、一様に「世界経済は依然として高い成長を維持する」という予測を出していた。足元まで危機が迫っていたにもかかわらず、誰一人としてその破局を予測できなかったのだ。

 複雑性が増した現代社会において、1~2年先の未来を正確に予測することはサイエンスの力を以てしても不可能に近い。同氏は、1971年に現在のタブレット端末のコンセプトを予言した計算機科学者 アラン・ケイ氏の言葉を用いながら、今後に必要な意識について述べる。

 アラン・ケイ氏は、後年に日本の技術者から「あなたの予測はすべて当たりましたね」と称賛された際、怒りながらこう言い返したという。

 「私がしたことは、予測なんて無責任なことではない。コンピュータはこういうものになるべきだという『運動』をしたのだ」

 未来がどうなりそうかを予測し、それに受動的に適応しようとするのではなく、自分はどのような未来を作りたいのかという「構想(ビジョン)」を掲げ、主体的に社会を動かしていく。不確実な時代を生き抜くために必要なのは、不可能な予測にエネルギーを費やすことではなく、自らの美意識に基づいたビジョンを世の中に提示し、同じ想いをもつ仲間を惹きつける「構想力」だと山口氏は語った。

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奥谷 笑子(編集部)(オクヤ エコ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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