ブランド認知の壁を越えて、日本のエンタープライズ市場を拡げられるか?
ここまで見てきたように、Synologyの提供する技術やソリューションは、エンタープライズ市場の要件に一定応え得るものである。しかし、同社がエンタープライズ市場で地位を築くためには、乗り越えなければならない壁は多い。その一つが「ブランド認知」だ。
日本企業は、ITインフラの選定において保守的な傾向がある。長年利用してきた大手ベンダーの製品から乗り換えることには心理的な抵抗がともない、技術的な優位性やコストメリットだけでは意思決定が覆らないケースも少なくない。また、長年にわたりコンシューマーやSMB市場で築き上げてきた「安価で手軽なNAS」という強固なブランドイメージが、皮肉にもエンタープライズ市場においては「ミッションクリティカルな用途には向かないのではないか」という先入観を生じさせている。
この疑問に対してSynology Japan社長のジョアン・ウェン氏は、インタビューで率直に次のように語った。
「市場の認識と当社のイメージにギャップがあることは仕方がないが、私たちはエンタープライズレディのソリューションを提供しているということを発信しつづけ、そのイメージを変えていくことが重要だと考えている。SMBだけでなく、エンタープライズ向けのハイエンドソリューションであるという理解が広まれば、導入もさらに進んでいく」(ウェン氏)
Synology Inc. International Business Department Director ジョアン・ウェン(Joanne Weng)氏
グローバル各国と比較しても、日本をはじめとしたアジア市場は保守的な企業が多い。認知拡大にも時間が必要だからこそ、中期的な視点でのブランド醸成に意欲を見せた。
また、既に日本市場においては、エンタープライズ市場に攻勢をかけるべく、日本法人の体制強化にも乗り出している。エンタープライズ向けの営業部隊については、来年にかけて人員を倍増させる計画だ。単に人員を増やすだけでなく、バックアップや監視ソリューションへの高度な専門知識をもつセールスエンジニアを育成し、エンタープライズ企業ならではの複雑な課題にアプローチできる体制も整えている。
また、顧客接点となるSIerやディストリビューターといったパートナーとの連携も一層強化し、パートナーが自信をもってSynologyのエンタープライズソリューションを提案できるようなトレーニングと技術支援にも注力していく方針だ。
今回のCOMPUTEX 2026でSynologyが発信したメッセージは、日本のエンタープライズ企業にとって新たな選択肢として魅力的に映るのか。同社が攻勢をかける市場は、既に多くのベンダーが乱立するレッドオーシャンでもある。独自の強みを活かしながら、いかに版図を拡げていけるのか。これからの同社の動向は注目しておくとよいかもしれない。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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