ただの読み物(レポート)は役に立たない──本当に機能する脅威インテリジェンスを組織へ実装せよ
「未知の脅威」を過度に恐れるな、インテリジェンスの活用で正確かつ能動的な対策が可能になる
「機能するインテリジェンス」をAIの力で実装できる時代になった
話は再び脅威インテリジェンスへと戻る。地政学的な緊張を背景とする脅威アクターの活発化については先述したが、昨今はウクライナや中東における現実世界での紛争の中で、サイバーと物理の境界が崩壊しているのではと思わせる事象も目立つ。データセンターにドローンやミサイルが着弾したり、水道や電気などの社会インフラに対してサイバー攻撃が行われたり、物理的な攻撃の前段階としてサイバー攻撃が仕掛けられたり……。日本ではまだ馴染みのない方が多いかもしれないが、FBI(連邦捜査局)は、AIインフラの心臓部であるデータセンターへの物理的なテロ・攻撃を現実的な可能性として認識しており、「2026年における最大の国内テロ脅威の一つ」として公式に分類している。
こうした物理的攻撃のプレイブックや草の根の計画は、攻撃が実行される遥か前から、DiscordやTelegram、SNSといったパブリックな場所で、長期間にわたって議論・共有されているケースが多いとレスリー氏。これらを事前に察知し、未然に防ぐためにも、脅威インテリジェンスによる監視が不可欠だと述べる。
ただし、先述のように「機能するインテリジェンス」でなければ意味がない。加えて、CVSSなどの静的なスコアをもとに地道に優先順位をつけ、膨大なリストを処理するような運用は、すでに限界を迎えつつある。
日本では、脅威インテリジェンスはアンチウイルスソフトと同じようなもので、2〜3日経てばどのベンダーでも同じ情報が手に入ると思っている人も少なくない。しかし、インテリジェンスの本質とは、単なる情報提供ではなく、その背景にあるコンテキストを提供し、アクションにつなげることにある。背景を理解しなければ、正しいアクションは起こせない。Recorded Futureとしては、まずこの本質を日本市場で広め、理解の浸透を図っていく構えだ。
もちろん、インテリジェンス能力を事業会社が自社内で育てるのは簡単ではない。しかし、このタイミングでAIエージェントの時代が到来した。これにより、これまでインテリジェンスの土壌がなかった組織でも、一足飛びに社内で体制を整えられるようになる。
それを可能にするのが、Recorded Futureの新たな製品ロードマップにある「ATO(Autonomous Threat Operations):自律型脅威オペレーション」だという。これまでは、高度な専門アナリストがレポートを読み解き、自社環境と照らし合わせ、アクションを決定しなければインテリジェンスを活用できなかった。しかしATOを社内に構築すれば、新たな脅威レポートが出た際、AIが自動的にその情報を自社資産やテレメトリに照らし合わせて検証を行う。そして、CISOや経営陣から「うちは大丈夫なのか?」と聞かれても、ATOがバックグラウンドで自律的に調査と検証を完了させ、「自社への影響はありません、すでに対処済みです」といったアウトプットを自動で提供してくれる。

そのうえで、同社の最大の差別化要因は、「圧倒的なデータ量、十数年間にわたりメンテナンスを続けてきた関係性データベースとデータソースの品質、そして何より、その膨大なデータを構造化・文脈化して活用できるようにする仕組み」だとエリオット氏は強調する。ただダークウェブをスクレイピングしただけの生情報や、文脈のないデータの上にAIを載せても、出てくるのは質の悪いアウトプットだけだと同氏。 Recorded Futureが提供するのは、情報をただのデータからインテリジェンスへと昇華させ、顧客のシステムに直接届けて自動的にテストや防御を実行できる仕組みだとアピールする。

最後に、エリオット氏は「AIの流行に乗じて、中途半端なAI製品や機能を提供する企業が増えている」と警鐘を鳴らす。セキュリティ製品をはじめ、経営や事業の高度化を図るために様々なテクノロジーを検討していることだろうが、その品質を厳しく見極めることを怠ってはいけないとメッセージを送った。中途半端なAIツールを導入することは、自社のアタックサーフェスを増やす結果につながりかねない。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
1998年生まれ。サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内・海外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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