キンドリルジャパンは2026年9月8日、報道機関向けの説明会を開催し、最先端の「フロンティアAI」の普及がサイバー攻撃と防御にもたらす構造変化と、企業がとるべきサイバーレジリエンスの再設計について同社の見解が発表された。
説明会には、キンドリルのストラテジーグローバル責任者であるクリス・ラブジョイ氏と、キンドリルジャパンのCCSO(Chief Cyber Security Officer)を務める北野晴人氏が登壇。急速に進化するAI技術が脅威を加速させる現状を踏まえ、従来の侵入を防ぐという防御中心の考え方から、攻撃を前提とした迅速な影響封じ込めや復旧力を重視するサイバーレジリエンス体制へ移行する必要性を解説した。
(左から)キンドリル ストラテジー グローバル責任者 クリス・ラブジョイ(Kris Lovejoy)氏
キンドリルジャパン株式会社 CCSO(Chief Cyber Security Officer) 北野晴人(Haruto Kitano)氏
セッション前半では、ラブジョイ氏がグローバルな技術動向と経営層に求められるガバナンスについて語った。クラウドがソフトウェア開発を民主化したように、AIは構築そのものを民主化させ、技術的なスキルを持たない主体でも洗練されたプログラムを作成可能にしたという。ラブジョイ氏は「AIは脆弱性をより早く特定できる。何が変わるかというとスピード感だ」と述べ、攻撃側がAIを活用して脆弱性の発見や攻撃の自動化を急加速させている現状を危惧した。これにともない企業がAIを本格運用する上では、モデルのデプロイだけでなく、統制と信頼性を担保した運用が不可欠になると話す。同氏は企業が自問すべき4つの問いとして「どこに、どの程度のリスクがあるか」「何から対処すべきか」「防御をどう強化するか」「業務を復旧できるか」を提示した。
これらに応えるため、IT環境の全体把握、優先順位付け、封じ込め、復旧、そしてシステムのモダナイズという5つのステップを継続的に回す必要性を強調する。
また、日本市場に対しては品質を追求する姿勢を評価しつつも「モダナイゼーションのスピードがあまりにスローである」と警鐘を鳴らし、脅威が顕在化する前にシステムを再構築する重要性を訴えた。
続いて登壇した北野氏は、日本企業が直面している課題と具体的に取り組むべき実践的アクションを説明。金融庁をはじめとする省庁の要請を受け国内企業で対応が進む中、北野氏は「能動的システム停止」と「インシデントリカバリー」という2つのトピックを重点的に取り上げた。
能動的システム停止とは、実際の侵害が発生する前であってもリスクが高まった段階で予防的にシステムを止める手法であり、事前に意思決定基準や周囲とのコミュニケーション方針を定めておくことが重要になるという。
またインシデントリカバリーに関しては、国内におけるランサムウェア被害の際、取得済みバックアップから復元できた割合は15%にとどまり、残り85%は暗号化や運用不備により復元に失敗している実態を警察庁のデータから示した。北野氏は「単にバックアップを取るだけでなく、汚染されていないクリーンなデータを見極めて迅速に復旧する仕組みが必要だ」と述べ、組織・人、プロセス、ツールの3要素を包括した復旧体制の整備を求めた。
短期的には脆弱性へのパッチ適用や仮想パッチ、ネットワークを限定するマイクロセグメンテーションによる封じ込めを実施し、中長期的にはセキュリティ機能が組み込まれたインフラへと刷新することが、将来の脅威に立ち向かう本質的な解決策となる。
ラブジョイ氏は「ゴールはインシデントを0にすることではなく、意思決定を迅速にし、混乱を最小限に抑えて重要なサービスを継続できる力をつけることだ」と語り、AI時代の脅威に屈しないIT基盤の構築に向け、日本企業が迅速にアクションを起こすことに期待を寄せて締めくくった。
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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