なぜ「リアルタイム分析」は広がらなかったのか 技術よりも根深い、“組織の壁”
第2回:企業内データがリアルタイムにならない理由 構造から読み解く、本当の原因
なぜ今、「データ・イン・モーション」なのか
では、なぜ今になって「データ・イン・モーション」が再び注目されているのでしょうか。その最大の理由は、企業に求められるスピードが変わったことにあります。
かつては、昨日の結果が分かれば十分だった業務でも、現在は「今知りたい」「今判断したい」「今動きたい」という要求が強まっています。そして、市場環境の変化も速くなっています。顧客の行動はリアルタイムで変化し、競争環境も激しくなりました。
そして、その変化をさらに加速させているのが「AI」です。
最近、お客様との会話で増えているのは、過去のデータをじっくり「分析したい」という相談ではありません。「起きた異常をその場で検知したい」「設備故障を事前に予測して手を打ちたい」「AIエージェントに最新情報を基に自律判断させたい」といった、次のアクションに直結するような相談です。
どれも、データを蓄積してから分析していては間に合いません。必要なことは、流れつづけるデータを、そのまま業務やAIへ届けることです。特にAIエージェントは、リアルタイムに情報を取得・判断し、行動することを前提としています。古いデータを基に判断するAIエージェントは、価値を発揮できません。
これが、データ・イン・モーションという考え方が再び注目されている理由です。
なお、データ・イン・モーションとは、単にストリーミング技術を指す言葉ではありません。データを蓄積してから活用するのではなく、流れているデータそのものを価値として活用するという考え方なのです。AI時代の到来によって、この考え方が再び脚光を浴びるようになりました。
問題は技術ではなく、構造にある
リアルタイムデータ活用が進まない理由は、技術力が不足しているからではありません。
長年にわたる部門最適化によって形成されたシステム構造、組織を横断するデータガバナンスの難しさ、そしてマルチクラウドによって複雑化したデータ環境が重なり、リアルタイムデータの活用を難しくしています。
だからこそ、AI時代に求められることは新しいツールを追加することではなく、企業全体のデータの流れをどのように設計するのかという視点です。
次回は、こうした課題を踏まえ、リアルタイムデータを活用するための設計・アプローチについて解説します。統合型プラットフォームとデータ・イン・モーションという2つの考え方を比較しながら、AI時代に求められるデータ基盤のあり方を考察します。
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吉田 栄信(ヨシダ エイシン)
Cloudera株式会社 ソリューションズ エンジニアリング マネージャークラウド、ビッグデータ、データガバナンス、PaaS、Webアプリケーションなどの分野で、アーキテクチャ設計や実装に携わってきたソリューションエンジニア。2019年6月にCloudera株式会社へ入社。入社以前は、DXCテクノロ...
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