コンサルタント、プロフェッショナルのスキルはどう変わるのか
──コンサルタントとしては、自分たちが築いてきたスキルを、AIエージェントのスキルとして作り上げていこうという動きもあるのでしょうか。
山根 AIエージェントとタッグを組んで、共有知をベースに物事を上手くやらせるスキルはすぐに誰でもできるようになります。ただ、AIエージェントのスキルを量産してポータルで共有すれば誰もが使いこなせる、という考え方には非常に違和感があります。
──それはなぜでしょうか。
山根 現場のAIエージェントのスキルは、Claude Codeに作れと言えば一瞬でできてしまうのです。ただのマークダウン(md)ファイルですから。将棋を例にすると分かりやすいのですが、「穴熊」や「矢倉」といった定跡は教本を読めば理解できます。でも、理解しているのと実際に指せるのとは全然違うのです。何度も対局して、上手くいったという成功体験があって初めて「自分は穴熊が指せる」と言えるようになる。スキルを共有して標準化して展開すれば、みんな将棋が上手くなると思っているような感じで、違和感があるのです。
──PoCで止まっている企業が多い、という声もよく聞きます。乗り越えるヒントはありますか。
山根 使えないと言っている人ほど、正しく使っていないことが多いのです。経営層が「自分たちは一番使っているよ」と言っても、実際は一問一答のチャット利用程度であることもあります。自分のパーソナルなセカンドブレインをAgentic Searchで立てて自動で育つところまで使い込む経営者がどれだけいるか。トップダウンで計画するのではなく、現場でゲリラ的に小さく始めるしかないと思っています。自分たちの取り組みも、プロジェクトの中で小さくゲリラで始まったのが育っていった結果です。
シニアが無双状態、AI時代のエンジニア、働き方はどう変わるのか
──開発の現場は具体的にどう変わってきていますか。
山根 シニアエンジニアやシニアテックアーキテクトが鬼に金棒状態になっていて、無双しています。これまでの経験があるから、AIの出力が「何かおかしい」と分かる。そうしたシニアの価値は圧倒的に上がっています。ただ、私を含めてシニアエンジニアがあと何年やれるのか、という問題があります。次の世代をどう育てるかが次の重要な課題です。
──若手の育成という点では、どのような課題を感じていますか。
山根 今までの日本のIT業界は、コンピュータサイエンスをきちんと学んでいなくても、入れるようなところがありました。言われたことだけをこなす、関心も適性もない人は、これからはいなくなっていくと思います。一方で、AI時代だからこそ、ソフトウェア開発そのものに関心と適性があり、アルゴリズムやデータ構造といったコンピュータサイエンスの基礎を身につけている人が、次の世代のシニアエンジニアになっていく必要があります。そうした基礎があるからこそ、AIの出力が「何かおかしい」と見抜けるようになるからです。
ただ、問題はそうした人たちが経験を積む場が奪われてしまっていることです。以前は、システムを一つひとつ組み上げ、バグと格闘しながら「どこが間違っているのか」を自分の頭で突き止める、その苦労の積み重ねがシニアエンジニアを育てていました。ところが今は、AIが「これが正解だ」と答えを先に出してしまう。正解を自力で導く過程が短絡されるなかで、どう育てるかが業界最大の課題だと思います。
──最後に、AI時代に人間に求められる基礎について伺えますか。
山根 5つあります。課題が何かを深く考えて明文化できる「課題の深堀りと明文化」。AIには情熱がないので、意志を持って人を巻き込み推進する「自律的な推進力」。広くテクノロジーの知見を持つ「テクノロジーの基礎教養」。最終イメージを持ちモジュールに分けて構築の最適解を考える「アーキテクチャ設計力」。そして複数のAIエージェントを並行して使役し、組織・チームを組成して進める「プロジェクトマネジメント力」です。これらはAIにはない、人間がやらなければいけないものだと思っています。
私自身も、考えの核となる部分は絶対AIに作らせません。筋トレのようなもので、それをやらないと脳が溶けていくので。全部自分の言葉で書いてから、AIがお化粧して整える。そこだけはAIに任せています。
この記事は参考になりましたか?
- EnterpriseZine Press連載記事一覧
-
- 「顧客理解」を経営の資産に変えるには? アドビが語るAIエージェント時代のブランド戦略
- AIでシニアが無双状態、若手をどう育てるのか? アクセンチュア トップコンサルタントに聞く
- 元良品計画会長・堂前氏が語る「作業員としての人間」の終焉 AI時代に“自律型組織”をどう実...
- この記事の著者
-
京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
