製品ベンダーによるサポートサービスの限界
オープン系データベース製品の代名詞ともいえる「Oracle Database」。読者の方々の中にも、日々Oracle Databaseとともにシステムの開発や運用に従事している人が多いだろう。
同製品は長い歴史を持つため、巷にはその開発や運用に役立つさまざまな情報が流通している。しかし、たとえそれらを小まめにチェックしていたとしても、さまざまに異なるハードウェア、OS、ミドルウェアを複雑に組み合わせたマルチプラットフォーム上では、どうしても予期せぬトラブルに出くわしてしまう。
こうした場合に備え、オラクル社では製品サポートサービスを提供しており、その充実ぶりはかねて定評のあるところだ。しかし、このサービスを最大限に活用するためには、ユーザー側にもそれ相応の製品スキルが要求される。また、オラクル社にトラブル調査を依頼する際には、場合によってはユーザー側で問題の範囲や発生条件を調査し、切り分ける必要もある。実際に行ったことのある方ならお分かりだろうが、こうした作業は決して容易ではなく、得てして多くの工数が割かれてしまうものだ。ましてや、データベースの専門家が社内にいない場合は、なおさらだ。
株式会社日立システムアンドサービス(以下、日立システム)では、多くのOracleユーザーが抱えるこのような悩みを解決するためのサポートサービスを提供している。それが、「Oracleサポートサービス」だ。
ユーザー側の立場に立った製品サポートサービス
同サービスは、Oracle製品の問題の調査・切り分けから、解決方法の調査、検証まで、すべての作業を日立システムが一括して請け負うものである。問題の種類によっては同社がオラクル社に直接問い合わせを行い、製品の修正や解決策の提示を引き出すための交渉をユーザーに代わって行う。日立システム プラットフォームソリューション本部 サービスビジネス部 ソフトウェア技術グループ 主任技師の初原広一氏は、Oracleユーザーにとっての同サービスの意義を次のように説明する。
「テスト環境がない。DBAもいない。そんな環境では、ユーザーが製品の不具合を切り分けたり、再現プログラムを作成することなどできません。そこは、われわれのようなSIベンダーが間に入ってやるしかないと思っています」
しかも、ただ間に入るだけではない。同サービスの最大の特徴は、完全にユーザー側の立場に立ったサポートサービスに徹するところだ。開発プロジェクトの特性やスケジュール、あるいは運用環境のシステム構成など、ユーザーに固有の事情をきちんと把握し、その中でOracle製品がどう位置付けられているかを考慮した上で、サポートを提供する。同社 プラットフォームソリューション本部 サービスビジネス部 ソフトウェア技術グループ 技師の池田尊敏氏は、同サービスのポリシーを次のように述べる。
「製品ベンダーのサポートサービスと最も異なるのは、お客さまに近い立ち位置で製品の不具合に対応するという点です。われわれは『製品のサポート』ではなく、『お客さまのサポート』を提供しているのです」
さらに同サービスは、ほかのSIベンダーが提供する同種のサービスに比べ、圧倒的に長い歴史と実績を誇る。日立システムが同サービスの提供を開始したのは、何と16年も前の1994年、Oracle Databaseのバージョンがまだ「6」だった時代だ。それから長い時間をかけてスキルとノウハウを蓄積してきた結果、現在では顧客満足度調査で90%以上の顧客から「満足している」という回答を得ている。
すべてのバージョン、すべての種類のOracle製品をサポート
Oracle製品に限らず、パッケージソフトウェアを利用する際によく問題になるのが、製品のサポート切れとそれに伴うバージョンアップだ。しかし、ミッションクリティカルな基幹システムの場合、一度データベースを構築するとなかなかそれに手を加えづらくなってしまう。その結果、古いバージョンのOracle Databaseをやむなく利用し続けるユーザーが少なくない。日立システム プラットフォームソリューション本部 サービスビジネス部 ソフトウェア技術グループ 技師の石井康久氏は、こうした現状について次のように述べる。
「古いバージョンのOracle Database、特に9iのユーザーはまだまだ多いので、これがサポート切れになったインパクトは大きいと思います。しかし、われわれはそうしたお客さまに対しても積極的にサポートを提供しています」
そう、同社は既にオラクル社がサポート対象外としている製品に対しても、サポートサービスを提供しているのである。もちろんその場合、新規の不具合に対する修正は行われないといった制限はあるものの、同社がオラクル社と直接交渉し、ユーザーにとってベストの解決策を提示するという。
また、「Oracle製品」と一言で言っても、その種類は多種多様だ。ほんの少し前までは、オラクル社といえば「データベース製品のベンダー」と見られていたが、現在ではハードウェアからOS、ミドルウェア、アプリケーションまですべてのエリアの製品をそろえる総合ベンダーへと姿を変えつつある。そうした中、日立システムはオラクル社のほとんどのソフトウェア製品に対してサポートを提供している。
「Web系の分野を中心に、管理ツールやミドルウェア製品の問い合わせが増えてきています。現に、問い合わせ全体の3~4割は、そうしたデータベース以外の製品で占められています」(池田氏)
サポートの現場に聞く「トラブルの傾向」
一方、Oracle Databaseに関して言えば、バージョン10g以降でオプティマイザの仕様が変わったことに起因するパフォーマンス低下の問い合わせが増えてきているという。9i以前のバージョンからバージョンアップした際、この仕様変更を意識したSQLのチューニングを怠ったがために、パフォーマンス低下を招くケースが少なくないという。
その一方で、古いバージョンから一貫して多く問い合わせを受ける、いわば「定番」のトラブルもある。日立システム プラットフォームソリューション本部 サービスビジネス部 ソフトウェア技術グループの山崎啓利氏によれば、「ある時からパフォーマンスが低下してきた、SQLの処理が遅くなってきた、という問い合わせは、Oracle Databaseのバージョンを問わず常にあります。また、ORA-4030、ORA-4031といったメモリ関係のエラーコードについての問い合わせもコンスタントにありますね」という。
また、今後増えることが予想されるのが、仮想化に関する問い合わせだという。オラクル社は「Oracle VM」という仮想化ハイパーバイザー製品を提供しているが、少数ながらも既に同製品に関する問い合わせが日立システムの元に届いているという。さらに言えば、既に多くのユーザーがVMwareをはじめ、何らかの仮想環境の下でOracle製品を運用しているという。
「ユーザー自身も知らないうちに、Oracle製品をVMwareの仮想サーバ環境上で動かしていたというケースは既に幾つかありました。もちろん、仮想環境であろうと物理環境であろうと、われわれが提供する製品サポートの内容に変わりはありません」(石井氏)
顧客の課題をサポートチーム全体で共有
こうしたさまざな製品ノウハウを有したサポートメンバーが、24時間365日の体制でサービスの提供に当たっている。もちろん、そのほとんどがORACLE MASTERの有資格者だ。日立システム プラットフォームソリューション本部 プラットフォームソリューション企画部 マーケティンググループ 技師の武田一城氏が、サポートチームの面白いエピソードを披露してくれた。
「このチームは、定時になると全員がその場で立ち上がって、今日どのお客さまでどんなことがあったかを報告し合うスタンディングミーティングを行っています。お客さまに固有の事情を皆で共有して、先方に余計な負担を掛けないよう、常に心掛けている表れだと思います」
製品に関する高度なスキルと、顧客目線の高いサービス意識。この両者が高い次元で両立している点にこそ、Oracleサポートサービスの強さの秘訣があるのかもしれない。
*
なお、株式会社日立システムアンドサービスは、日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社との合併により、2010年10月1日に、株式会社日立ソリューションズとして新たにスタートを切ることになっている。
【関連資料】
サポートセンターが教えるOracleエラー対策
“手詰まり”からの打開策を大公開