創業50年超のアシストが描く製品提供の「その先」 既存資産を殺さないSoR/SoIの現実解とは
AI活用を成功に導く「データ基盤の本質」とアシストの伴走戦略
「守り」と「攻め」を分けるSoR/SoI分離の本質
データ基盤を設計する上で重要となるのは、データの役割や要求水準に応じて、アーキテクチャを分離する考え方だ。
具体的には、決算や規制対応といった基幹システムからのレポーティングが欠かせない、厳格な正確性と統制が求められる“守り”の領域「SoR(System of Record)」と、探索や実験などのスピードが重視される、分析・AI用途にあたる“攻め”の領域「SoI(System of Insight)」を切り分けるアプローチだ。
特に、基幹システムの刷新やクラウド移行といったプロジェクトでは、画面作成やレポート出力といった要件が後回しにされがちである。その結果、新システム稼働後に必要なデータを取得できず、現場業務が停滞するといった問題が生じるケースも少なくない。こうした事態を避けるためには、まず基幹システムと同等の安定性とガバナンスを備えたSoR領域のデータ基盤を整備し、業務継続性を担保することが前提となる。
一方、SoI領域ではセルフサービスBIに加え、日報や応対記録といった非構造化データを取り込んだAI活用が求められる。SoRとSoIの役割を曖昧にせずに切り分けることで、基幹データの正確性とガバナンスを維持しながら、アジリティの高い“AI活用基盤”を安全に構築可能だ。データ基盤を全面的に刷新して一本化するという発想ではなく、それぞれの強みや目的に応じて共存させるという現実的なアプローチといえるだろう。
こうした分離アーキテクチャは、実装の自由度が高い点も重要となる。SoRとSoIの分離は、必ずしも物理的に異なるデータベースを用意することを意味しない。企業の規模や既存資産によっては、単一のデータベースでスキーマやアクセス権限を論理的に分割することで、同様の設計思想を実現できるからだ。岸和田氏は、「守りと攻めを分けるような考え方は、二重管理によってシステムを無駄に複雑化させるものではありません。既存のデータ資産を最大限に活かしながら、安全かつ着実にデータ活用を高度化していくための合理的なアプローチです」と語る。

AIの精度を高めたいユーザー 関心高まる「セマンティックレイヤー」
AI-Readyなデータ基盤を実現する上で鍵となるのは、「セマンティックレイヤー」の追加である。構造化データや非構造化データを集約し、生成AIから参照できるようにするだけでは、業務で使える高精度なアウトプットを得にくい。データが生まれたビジネス上の背景やデータ同士の関係性、さらには権限やガバナンスといった文脈(コンテキスト)が付与されていなければ、AIが誤った解釈やハルシネーションを引き起こすためだ。
セマンティックレイヤーは、データ基盤とAIツールの間に位置し、データに「意味・関係・権限」を与える役割を担う。既存基盤を全面改修するのではなく、その上に重ねる形で導入することで、現実的なコストと期間を以ってAI活用を前進させられると注目が高まっている。たとえば、「売上」というビジネス指標がどのテーブルのどの項目から計算されるのか、どの部門のデータを含めるのか、といった定義や関係性をセマンティックレイヤーに統一的な形でもたせるようなイメージだ。ビジネス用語の定義を標準化することで、システム間におけるデータの紐付けを文脈として保持する。これにより、AIの推論精度が向上するだけでなく、業務ユーザーによる分析の一貫性も高まる効果が期待できる。
ただし、こうしたアーキテクチャがすべての企業にとって正解とは限らない。「どこまでを全社共通基盤として統制し、どこを現場に委ねるのかという判断は、単なる技術論ではありません。本質的には組織の権限設計や意思決定のあり方に関わる問題であり、経営層を巻き込んだ設計が不可欠だからです」と岸和田氏。事業特性や組織構造、データ活用の成熟度は企業ごとに大きく異なる。それ故にポイントソリューションで容易に解決することができず、“超上流”ともいえる工程からの設計が重要となる。そして、その課題に向き合うのはユーザーだけでなく、ベンダー側も同様だ。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:株式会社アシスト
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