クラウド時代のデータセンター運用の課題と解決策
現在、全体最適を目的としたサーバー統合が加速し、システム構造が変化している。従来はリソースや運用が部門・システムごとに個別最適された環境だったが、今後は必要に応じてリソースをクラウド・サービスとして利用する環境へと移行する。企業内に散在していた個別システムは、プライベート・クラウドの形で、企業内データセンターなどに集約されることになる。この状況を経営層から見ると、ハードウェアの標準化と一括調達によりコストが下がり、設置スペースも効率化できるなどのメリットがある。
その一方、クラウド環境を提供するデータセンターの運用担当者から見れば、集中化により機器が増える。さらに仮想化という新しい技術への対応や、プラットフォームの多様化により作業量や管理負荷が増大する。その結果、システム運用コストやインフラ管理コスト、さらにデータセンターの冷却電力コストの肥大化が避けられない。しかし運用管理部門は、現在以上の経費削減を求められているのが実情だ。そのため、クラウド時代の運用管理には劇的な効率化が求められている。
NECは2009年10月、クラウド・コンピューティングを支えるITプラットフォームビジョン「REAL IT PLATFORM Generation2」を発表した。そこで次世代IT 基盤の実現に向けて強化したのは「高効率インフラストラクチャ」、「サービス実行基盤」、「システムサービス管理」の3 ポイントである。
この中で「システムサービス管理」は、クラウド環境の運用管理基盤を示し、その実現を担うのが「WebSAM Ver.8」になる。以前の「Ver.7」は可視化、判断、改善の管理サイクル、「システム全体視点での統制」というメッセージに沿って製品を強化していた。最新版では、基本的な枠組みは変わらないものの、新しくクラウド環境を提供するデータセンターの統制をテーマにしている。では、先述のクラウドへの移行による大規模化、構成の複雑化、仮想化にどう対処するのか。我々は可視化と制御(判断と改善の自動化)がポイントだと考えている。
可視化ではまず、運用管理者に、大規模な環境をいかに効率よく見せるかがポイントになる。またエンドユーザーがシステム全体の構成を知る必要はないが、マルチテナントになってくると「自分に提供されているシステムの状況は見たい」というニーズが強くなると考えている。そこで、運用者、利用者の各視点でのサービス実行状況の見える化が必要になる。
もう一つの制御という視点だが、統合と集中によりサーバー等が増えてくると、システム監視、パッチ適用、バックアップなどを手作業で行っていては間に合わない。そこで制御の自動化が、クラウド時代の運用管理では必須になる。この2つのポイントに対処するのがWebSAM Ver.8であり、その導入により最適な運用管理を実現する。我々が考える可視化、制御における主なターゲットは以下の3 点となる。
- 運用コストの最適化
サービス実行状況の可視化、サービスの安定稼働・運用を効率的に制御し、運用負荷とコストを削減する。 - IT リソースの最適化
サービスを支えるインフラを可視化、管理し、メンテナンスの自動制御により、管理負荷とコストを削減する。 - エネルギーコストの最適化
データセンター構成のリソースの消費電力を可視化し、省電力制御をすることで、冷却のための電力を削除する。
この中で運用コストとIT リソースの最適化では、それぞれ可視化、判断、改善のサイクルを回す。まず運用のサイクルでサービスの実行状況を可視化し、問題が起きれば検出。根本原因の分析を支援し、リソースが不足していれば、リソース最適化のサイクルに移り、動的なリソース追加によりサービスレベルを回復するための処理を行う。
クラウド環境の運用管理というとプロビジョニングやランブックオートメーション(自動化)を中心に語られることが多い。WebSAM Ver.8 の特徴は、サービスの状況を見ながら、ハードウェアのリソースをきちんと制御するところにある。
今後もクラウド環境データセンターの全体管理を実現するための機能を強化していく予定だ。(次ページへ続く)