BTO 実現のためソフトウェア製品ラインナップを強化
ヒューレット・パッカード(以下、HP)は、1990年代からHP OpenViewブランドで運用管理環境やサービスレベルの管理をサポートするソフトウェア群を提供してきたが、2005年頃からソフトウェア事業を拡大・強化するために積極的な企業買収を開始。その代表例が、エージェントレス監視ツール「SiteScope」や負荷テストツール「LoadRunner」などを持つ米Mercury Interactive 社、データセンター自動化ソフトウェアを持つ米Opsware 社である。
2007年2月には旧HP OpenView製品群と買収した製品群とを統合・再編し、ブランド名称を「HP Software」に変更した。新ブランドの狙いは、「戦略立案」「アプリケーション開発」「運用管理」といったITのライフサイクルにわたり統合ITマネジメントをサポートし、ビジネスとITの連携を促進する「BTO(ビジネス・テクノロジの最適化)」を実現することにある。そのためHP Softwareは、個々の製品の機能強化だけでなく、製品間の連携を強化してきた。
当然「運用管理」の領域でも「BTO」の実現を目指して製品間連携の強化が図られてきたが、現在は(1)ビジネスサービス管理、(2)ビジネスサービス自動化、(3)IT サービス管理の3つの領域を、CMDBを中心として有機的に統合することで、クラウド時代の運用管理を支援している。
クラウド時代に求められるITサービスの生産性向上
クラウド・コンピューティング時代の運用管理に求められるポイントは何か。HP では、ITIL Version3 で定義されている広義の“サービスマネジメント”がこれまでにも増して重要になると考えている。その理由は、クラウド時代には「プロジェクトやシステム単位の機能提供」から、「自社のビジネス戦略に最適な”ITサービス”の選択・提供」への発想の転換が求められるからである。
クラウド利用が進んできた時のIT部門の役割は「サービスブローカー(仲介者)」となることが予想される。つまり、「パブリック・クラウド」「プライベート・クラウド」「クラウド化が適さないITサービス」を使い分け、最適なポートフォリオで「IT サービス」をビジネス部門に提供する“ 仲介者” である。ここでIT部門の企画力やガバナンスが重要となるわけであるが、これについては「提供するサービスを定義してこのサービスの需給管理を行いながら日々のサービス提供を行う」ことをPDCAサイクルを回しながら着実に行うのが成功への近道である。
次に日々のサービス提供とその効率化に焦点をあてていきたい。効率化の鍵となるのは自動化がどこまでできるかである。「ITサービスの提供」を「ITサービスの生産」に置き換え、サプライチェーンの考え方を想起していただくとわかりやすい。工場においてできるだけコストを抑えながら品質の高いものをつくりだすためには、標準化・自動化といった生産技術が重要であるが、ITサービスの生産においても同じことがいえる。自動化のためには対象となる作業や運用プロセスの手順をしっかりと定義し、自動化のための基盤を整備することが必要であるが、ここで必要となるのが「サービスマネジメントの実践」である。そして「自動化」の部分に対してはHP Softwareがもつ運用自動化技術を適用できるが、以下では「問題検知、障害対応の自動化」と「プロビジョニングの自動化」について説明する。(次ページへ続く)