新製品でどう変わる? 新たな局面でOracleが拡充するポートフォリオ
実行の仕組みに加え、今回はユーザーが業務を始める“入り口”にも手が入った。新たに発表されたのが「Oracle Fusion Companion」と「Oracle Fusion Agentic Home」だ。レオーネ氏は、「AIは、業務の起点を変えていますが、組織はその業務がどのように遂行されるかについて“統制”を維持する必要があります。Fusion Companionにより、従業員は既に利用しているAIツールを通じてビジネス目標を定義し、業務を遂行できるようになります」と説明する。
Fusion Companionは、Fusion Applications全体の上に位置し、ユーザーの依頼を適切な処理へと振り分ける役割を担う。ユーザーが誰で、どんな権限を持ち、どのような業務コンテキストにいるかを踏まえて、依頼を通常のトランザクションやワークフロー、AIエージェント、Clawランタイムのいずれかに割り当てる仕組みだ。対象はFusionの中に限らない。SharePointやBox、SAP、Salesforceといった外部システムをまたぐ業務も既存のセキュリティとガバナンスを保ったまま調整できる。また、OpenAI向けのプラグインを通じて、ChatGPTからFusionの業務を直接指示・実行することも可能。従業員が普段使っているAIツールをそのまま業務の入り口にできるというわけだ。
一方のFusion Agentic Homeは、数百万人規模の一般従業員やフロントラインワーカーに向けたポータルで、モバイルと音声での操作を前提に設計されている。キーボードで入力しなくても、やりたいことを声で伝えれば勤怠の打刻や休暇申請、経費精算、購買申請といった日常の手続きが完了する。さらに、「ハートビート」と呼ぶ機能が定期的な確認作業や目標の進捗を自律的に見守り、人が指示を出さなくても必要な業務を進めてくれる。
基調講演には、米国の通信大手スペクトラム(Spectrum)のバイスプレジデントを務めるデレック・ドレイファス氏も登壇。従業員約10万人を抱える、同社の人事業務の変革について紹介した。例として示されたのは、店舗の営業担当者が家族の急な入院に直面した場面だ。社内規定や申請書を探さなくても、AIに伝えるだけで休暇申請が済み、シフトの穴埋めや人事部門への連絡までが自動で完了する。ドレイファス氏は、「従業員の大半はデスクワーカーではなく、店舗やフィールドにいます。彼らが社内手続きに煩わされる時間をなくし、顧客や家族に向き合えるようにすることこそが重要でした」と語った。
導入ノウハウをオープンソースのAIスキルとして公開する「FSCR」
AIが業務を担うといっても、その前にFusion Applications自体を早く、安く導入・構成できなければ始まらない。この課題に向けて発表されたのが「Oracle Fusion Setup and Configuration Registry(FSCR)」だ。FSCRは、Oracle製品のセットアップや構成に関する専門知識とベストプラクティスをAIエージェントが読み込んで、そのまま実行できる形式(AIスキル)にまとめたもの。公開Gitリポジトリを通じて、オープンソースとして提供される。
レオーネ氏は、「顧客やパートナーは、導入のたびにセットアップと構成に関する重要な知識を再構築しなければならなかったり、新たな製品機能の追加にともなってすぐに古くなってしまうドキュメントに頼ったりすることが多くありました。FSCRは、Oracle製品に精通したプロダクトマネージャーがセットアップと構成のプロセス全体を通じてチームを導くようなものです」と述べた。
使い方はこうだ。ビジネス要件や業務プロセスの文書をAIエージェントに渡すと、FSCRのスキルをもとに実行手順書(Runbook)が生成され、環境の構築から設定、基本的な動作をたしかめるスモークテストまでをエージェントが進める。スキルは、Oracleの開発チームがリリースごとに更新するため、製品の最新機能や設定間の依存関係が常に反映される仕組みだ。従来のドキュメントのように、新機能の追加ですぐに古くなることはない。
これまでの導入プロジェクトでは、パートナー企業が初期設定の作業に多くの人手を割いてきた。Oracleはアクセンチュア、デロイト、PwCといった主要パートナーがこうした反復作業から解放され、業務プロセスの再設計など付加価値の高い仕事に人材を振り向けられるとしている。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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