さる10月12日から15日に、幕張メッセの国際会議場を中心にプロジェクトマネジメントの国際会議「ProMAC 2010」が開催された。ProMAC 2010は、プロジェクトマネジメント学会の主催で、200におよぶ一般報告と招待講演、キーノート講演などによって構成される。ここでは、数多くのセッションから3つをレポートする。
プロジェクトマネジメントの国際標準化をキーパーソンが語る
10月12日に行われた特別講演は、現在策定が進められているISO 21500、プロジェクトマネジメント国際標準化について、そのコミッティの創始者を招いてのセッションであった。登場したのは、ISO(国際標準化機構)PC(プロジェクトコミッティ)267の創始者であるジェームス・H・ゴードン氏とISO元会長で日本規格協会理事長の田中正躬氏。PM学会副会長の関哲也氏がモデレータをつとめた。

まず、田中氏の講演が行われ、続いてゴードン氏の講演、その後意見を交換する形でセッションが展開された。
田中氏は、グローバル化が進みICTの進展する中で、国際金融市場での規制緩和、製造業におけるアウトソーシングなどが進み、製造のプラットフォームが変化していている。そこにおいて、マネジメント手法の確立が重要なものとなり、国際プロジェクトの基盤が必要になってきたことを語った。
プロジェクトマネジメントの現状は、戦後世界発展の歴史的経緯をもっており、ISOのプロジェクトマネジメント規格の増加、ISO会員の増加の変遷を見てもその流れが読み取れるとした。そのなかで、ISO標準はかつてエンジニアリング部門が中心であったが、社会的責任やセキュリティ、エネルギー関連などグローバルなテーマの重要性が増していることなど、ISO国際規格の現状について解説した。
ゴードン氏は、BSI(英国規格協会)プロジェクトマネジメントコミッティ議長、ISO/PC236議長、ISO 10006 WG座長などを歴任し、プロジェクトマネジメントの標準化に大きな貢献をしている。ゴードン氏が関わってきた標準化への歴史は50年も前にさかのぼるという。
最初にまとめられたプロジェクトマネジメントの標準は1967年にBSIが刊行した用語集であった。その後、プロジェクトのネットワーク技法の用語集として1968年にBS 4335がまとめられ、1981年にはプロジェクトマネジメントのネットワークテクニックガイドであるBS 6046がまとめられた。
1987年にはBS 6079がまとめられ、それがISOのPC 236に提供されてISO 21500のベースになっていることが紹介された。ゴードン氏は貴重な資料である「BS 4335:1968 Glossaary of Terms Used in Project Network Analysis」などを会場で披露してくれた。

「規格は個別の業界や国のものでなく全体のもの、個別の領域ではその解釈を行う」というゴードン氏の言葉は、ISO 21500の位置づけを端的に表したものだといえる。田中氏も「ゆるいコンピテンスの保障の仕方」という言葉で、ISO 21500の位置づけについて言及した。
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- この記事の著者
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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