プロジェクトマネジメントの国際標準化をキーパーソンが語る
10月12日に行われた特別講演は、現在策定が進められているISO 21500、プロジェクトマネジメント国際標準化について、そのコミッティの創始者を招いてのセッションであった。登場したのは、ISO(国際標準化機構)PC(プロジェクトコミッティ)267の創始者であるジェームス・H・ゴードン氏とISO元会長で日本規格協会理事長の田中正躬氏。PM学会副会長の関哲也氏がモデレータをつとめた。
まず、田中氏の講演が行われ、続いてゴードン氏の講演、その後意見を交換する形でセッションが展開された。
田中氏は、グローバル化が進みICTの進展する中で、国際金融市場での規制緩和、製造業におけるアウトソーシングなどが進み、製造のプラットフォームが変化していている。そこにおいて、マネジメント手法の確立が重要なものとなり、国際プロジェクトの基盤が必要になってきたことを語った。
プロジェクトマネジメントの現状は、戦後世界発展の歴史的経緯をもっており、ISOのプロジェクトマネジメント規格の増加、ISO会員の増加の変遷を見てもその流れが読み取れるとした。そのなかで、ISO標準はかつてエンジニアリング部門が中心であったが、社会的責任やセキュリティ、エネルギー関連などグローバルなテーマの重要性が増していることなど、ISO国際規格の現状について解説した。
ゴードン氏は、BSI(英国規格協会)プロジェクトマネジメントコミッティ議長、ISO/PC236議長、ISO 10006 WG座長などを歴任し、プロジェクトマネジメントの標準化に大きな貢献をしている。ゴードン氏が関わってきた標準化への歴史は50年も前にさかのぼるという。
最初にまとめられたプロジェクトマネジメントの標準は1967年にBSIが刊行した用語集であった。その後、プロジェクトのネットワーク技法の用語集として1968年にBS 4335がまとめられ、1981年にはプロジェクトマネジメントのネットワークテクニックガイドであるBS 6046がまとめられた。
1987年にはBS 6079がまとめられ、それがISOのPC 236に提供されてISO 21500のベースになっていることが紹介された。ゴードン氏は貴重な資料である「BS 4335:1968 Glossaary of Terms Used in Project Network Analysis」などを会場で披露してくれた。
「規格は個別の業界や国のものでなく全体のもの、個別の領域ではその解釈を行う」というゴードン氏の言葉は、ISO 21500の位置づけを端的に表したものだといえる。田中氏も「ゆるいコンピテンスの保障の仕方」という言葉で、ISO 21500の位置づけについて言及した。
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