アプライアンスを中心にリモートデスクトップを提供
DesktopDirectの特色はそのシンプルさにあるといえる。セキュリティや証跡管理などのコンプライアンスが確立した社内システムにこのソリューションを導入するだけで、セキュリティやコンプライアンスを社外からのリモートアクセスに対しても拡大できるのだという。
そのシンプルさのポイントは、ハードウェアとしてはDesktopDirect Controllerというアプライアンスを導入するだけで構成できるところにある。アプライアンスは社外からのゲートウェイとして機能し、そこにはART(Array Registration Technology)という、社内サーバーやデスクトップとユーザー情報が登録されたデータベースが内蔵されている。ここでユーザーとPCがマッピングされて、登録PCにのみアクセスが可能となる。
このアプライアンスが、セキュアなリモートデスクトップを実現するキーポイントとなっている。社内システムの構成がDesktopDirectがサポートするものであれば、家庭のPCやiPad、iPhoneなどによってリモートデスクトップ接続が可能となる。
通信はSSLで暗号化され、セキュリティ面ではLDAPやRADIUSなどのプロトコルと組み合わせて利用することができる。リモートデスクトップPCなどへのデータ保存や印刷を制限することで情報漏えいを防ぐことが可能だ。
Windowsでは、 Windowsのリモートデスクトップ機能(RDP 5.0以降)を利用して、iPadやiPhoneではAppStoreから入手可能な専用アプリを利用して社内のPCにアクセスが可能となる。そのため、社内デスクトップは、Windows XP ProfessionalやWindows Vista Business、Windows 7 ProfessionalなどRDPホスト機能をもったものが必要とされる。サーバーはWindows Server 2003、2008がサポートされている。
このソリューションの最大の特色は、Wakeup-on-LAN機能、「リモートで電源投入が可能なこと」(ラパポート氏)にあるという。もちろん、リモートデスクトップ接続が終了すれば電源オフもできるため、省電力という観点からみて優れているし、必要な情報のために残業をして待機している必要もなくなる。自宅のPCから接続すれば、社内とおなじ作業を続けることができるのだ。
非常時にはユーザー数を増やすライセンス形態も
アレイ・ネットワークスでは、このDesktopDirectをBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)として災害等の障害に備えると同時に、日常的な業務中断を回避できるソリューションとして営業活動を行っている。新型インフルエンザのようなパンデミック(世界流行)の可能性、地震、台風などによる自然災害、交通機関のマヒなど、事業継続に対するさまざまなリスクを避ける方策としてこのソリューションは有効であるが、個人や交通等の事情によって出社ができない場合にも業務に支障が生じないような対応が可能だという。
ほかのVPNなどリモート接続のソリューションと比べてシンプルな構成であるため、コスト的に優位にあるといっても、非常時対策を主要な目的として導入コストをかけることに企業は躊躇するのではないかと思われる。しかし、ラパポート氏からは日常的な業務継続にも有効だとして、「ユーザー企業に対しては常にDesktopDirectの利点を理解してから導入していただくようにしています。身体の具合が悪くなったり、自宅に工事業者が入ったり、交通障害などによって、出社できないことは日常的にあります。それによって、業務が滞って企業が損害を受けることを回避するだけでも短期間に導入コストを回収することが可能」という説明があった。
日常的なリモートデスクトップ接続のライセンスを基本として、非常時には接続ユーザー数を増やすなど、フレキシブルなライセンス形態が可能になっているという。同時に「DesktopDirectは、スケーラビリティに優れたソリューションで、システムの大きな変更なしに必要に応じて接続ユーザー数を拡大することが可能です。業務拡大や非常時に備えてそのベースとして導入しておくことに利点があります」(ラパポート氏)という。
このソリューションは、BCPや在宅勤務に有効であるだけでなく、モバイル機器が多様化して普及する中で、さまざまな場面で応用される可能性を秘めていると感じた。