仮想化で大きく変わる非機能要求の管理
ITインフラにおける仮想化の導入が進んでいる。実際、日立製作所の顧客の事例でも仮想化により、「設置スペースが80%削減できた」、「ランニングコストが30%下がった」などの効果が報告されている。しかし日立製作所の村井和男氏は「仮想化により、誰でも簡単に効果が得られるわけではない」と注意を喚起する。
仮想化を行えば、基本的に物理的な制約から解放される。ハードウェアを購入しなくても、リソースがあれば仮想サーバーの迅速な配置など、柔軟な割り当てによる“切り売り”できるからだ。ところが、そのようなメリットは半面、運用・管理面での新たな不安を生むことも事実だ。
たとえば、仮想化によるプロビジョニングの自動化、変更管理プロセスの自動化によって大きなメリットが得られるものの、インフラストラクチャが動的なものになるため、構成管理と資産管理などに複雑な影響が及ぼされると言われている
では、具体的に何が変わり、どのように対応すべきなのか。
村井氏は「例えば機能要求と非機能要求に分類してみると、影響度の大きさを切り分けることができる」と分析する。機能要求で求められる機能とは、販売や会計、分析、エンドユーザーコンピューティングなど、アプリケーションのコードで実装されるものになる。実行環境が仮想化であっても、求められ、使用される機能は変わらないので、移行後の管理項目は基本的に物理環境と変わらない。
一方、非機能要求はシステムの障害時の耐性や応答速度などの性能など、情報システムの強度や品質に関する要求であり、実行環境への依存度が高い。そのため仮想化導入において、特に考慮すべきは非機能要求に関する部分であり、さらにその中でも可用性、性能・拡張性、運用・保守性が問題になる可能性が高い。なぜなら、仮想環境に移行した以後も、考慮し続けなければならない要素だからだ。