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仮想化に特化したWebSphereで真のPaaS環境を容易に構築できる

第2回

自社にプライベートクラウドを構築したいときには、どんなことに注意すればいいのだろうか。莫大なコストをかければAmazon EC2やGoogle App Engineのような環境でも構築できるかもしれないが、それは現実的ではない。既存の環境と同様なものを素早くプライベートクラウドに移行するには、仮想化環境に特化したミドルウェアが必要であり、その際の重要なキーワードは自動化と自律化だ。

PaaSと言いながらIaaS止まりのクラウドがある

 クラウドコンピューティングとは、ネットワークを介したITシステムの新たな利用方法だ。利用形態からパブリッククラウドかプライベートクラウドかの違いがあり、他にも何をサービスとして提供するかでSaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)という3つの種類に大きく分類できる。これらは、ユーザーが何をクラウドコンピューティングに求めるかにより、適宜選択すべきものだ。

 IBM WebSphere Application Serverは、パブリッククラウドでもプライベートクラウドでも活用できるアプリケーション・サーバーだ。プライベートでの利用は当然ながら、すでにAmazon EC2のイメージファイル形式でも提供されている。とはいえ、このWebSphereというミドルウェア製品が、クラウドコンピューティングにおいてもっとも強く意識している領域が、プライベートクラウドのPaaSの部分だ。

 PaaSはアプリケーションの開発、稼働環境を、ネットワークを介して提供するものだ。そして、これを利用するユーザーは、おもにはIT技術者ということになる。PaaSユーザーの関心は、アプリケーションを開発することと、それを配備することにあり、環境のセットアップやチューニングといったことをやりたいわけではない。素早くアプリケーションを開発、稼働させるようにするのは、まさにPaaSソリューションが担うべきところなのだ。

  「世の中にはIaaSの域に止まっているクラウドがたくさんあります」と語るのが、日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 WebSphere 事業部 コンサルティングIT Specialistの樽澤広亨氏だ。樽澤氏は、PaaSと呼ぶにはいくつかの条件を満たす必要があると説明する。

 IaaSを活用することで、システム基盤となるサーバー環境を素早く調達し、自動的に構成することが可能だ。その自動化の仕組みを応用拡張して、さらに、OS、アプリケーション・サーバーやデータベース、負荷分散機能などを、それぞれ自動導入することも可能である。ミドルウェアを含むソフトウェア導入が自動化されてはいるが、このケースはIaaSの域から抜け出しているとは言えない。

 なぜならば、各ソフトウェアの構成や稼働テストは、依然としてユーザーが自ら行わなければならないからだ。このように、たんにIaaSの上にアプリケーション・サーバーやデータベースなどが導入できるだけでは、たとえ導入作業が自動化されていたとしても、PaaSと呼ぶことは出来ない。これに対し、ユーザーが利用したいアプリケーションの稼働環境を選ぶと、ハードウェアの準備に加えて必要なソフトウェアが自動的に導入、構成されて、すぐに希望の環境が提供されるのがPaaSである。

 これを実現するには、まず、開発用、稼働環境用、規模の大小、必要なミドルウェアの組合せなどを、あらかじめパターン化しておく。各組合せはあらかじめテスト済みで、選択すればすぐに利用できるものだ。これを、ユーザーの選択に応じて、容易されているハイパーバイザーの上に配布するのだ。検証済みなので、配布ができればすぐに利用可能となる。あとは、バックアップやチューニングなどの設定が多少残る程度だろう。「ここまでできて初めてPaaSと呼べる」と樽澤氏は言う。

 さらにこの発展型として、パターンを選んだ結果がマルチテナント化された共用サービス、集中監視システム、自律的運用システムを備えたモデルが期待される。ここまでの環境を用意するには、現状ではそれなりの投資も必要になるかもしれない。(次ページへ続く

 

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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