独り占めから皆で仲良く〜SANとストレージ統合〜
1980年代後半まで、コンピューター世界の主役はホストと呼ばれる大型コンピューターであったが、1990年代の前半から始まったマイクロ・プロセッサーの技術革新によって、UNIXやWindowsサーバーなど新しく生まれたサーバー群によってその主役の座を取って代わられることになった。いわゆるオープン化の波の到来である。
それまでは大型コンピューター1台にたくさんの仕事を集約し、大勢で1台のコンピューターを効率的に利用する形態が主であったが、より廉価に調達できるUNIXやWindowsサーバーの台頭により、目的別、用途別にサーバーが利用されるようになった。
その結果今までに経験しなかったほどの膨大な数のサーバーをユーザーは管理しなければならなくなった。オープン化を推進する原動力は、比較的廉価に調達できるオープン系サーバーの採用によってコストを下げ、かつアプリケーション・バックログと呼ばれるシステム開発遅延を解消したいという願望であった。
サーバーの爆発的な増加とTCOの増加
サーバー数の増加はアプリケーション開発を分散して実行することを具現化し、かつエンドユーザーにより近い場所でシステム開発が実現できる環境を整えたという意味で、利用者に大きなメリットをもたらした。GUI(Graphical User Interface)の発展も目に見える成果の一例であろう。
しかしながら小さなサーバーの増加は運用負荷の増大や各種ソフトウェア使用料金の増加をもたらした。それまでは機器の初期購入費に大きな焦点が当たっていたが、ユーザーはそれまであまり意識していなかったこのような部分に対するコスト増を意識するようになった。これは「見えざるコスト」と呼ばれている。
この結果、見えざるコストと機器の初期購入費など見えていたコストを合わせたコスト概念が形成され、総保有コスト(TCO:ティーシーオー:Total Cost of Ownership)という発想が生まれた。TCOには資産であるコンピューター機器を購入してから最後に廃棄するまでにかかる総費用が含まれる。具体的には機器の購入費の他に、機器の保守、運用、ソフトウェアの導入及び更新作業、これら関わる人件費光熱費などが含まれる。特に人件費は見えざるコストの代表例とされている。
例えば営業部に設置された営業部サーバーの導入について考えてみよう。
予算が用意できれば比較的廉価にハードウェアは調達できる。主にファイルサーバーのような使い方をするのであれば、適用業務プログラムの開発も必要ないので、そこそこのコンピューター知識さえあれば導入は可能であろうと営業部長は考えてしまう。この結果、採用や購入は直ぐに決断されるのであるが、残念なことにそれを管理する専用の人員を確保することはできない。したがって単に年が若いという理由やお前は理系の出身だったなどの理由で営業部のなかの若年営業担当員がサーバーのお守りをさせられてしまう。
彼(彼女)はコンピューターのプロではない。したがって仮にパソコンをいじる程度の知識はあっても、サーバーを設定する知識はあるはずもない。しかし部長命令なので仕方なくマニュアルを読みながら必死に導入を行なう。それで首尾よく導入が行なえたとしても、それでご赦免になるわけではない。日々の運用過程でそのサーバーに関わる疑問にも答えなければならないし、何か問題が生じたら、その対応を要求される。挙句の果てに年配の営業員が使うパソコンが新しいものに変わったら、サーバーを利用するための設定をやれということになる。
くどいようだが彼らはサーバーの担当員ではない。あくまで営業担当員なのだ、企業は彼らを営業職として採用し、本職である営業成績を上げることを期待して給与を支払っている。彼らがサーバーのお守りをしている時間、彼らは本職である営業活動を一切行なえない。彼らがサーバーの管理を行なっている間、販売機会を喪失しており、企業は本業の営業成績を向上させることができない。このようなことが企業の至る所で起こるため、サーバーが廉価に導入できるようになったことが逆に総費用を押し上げる結果となってしまった。