シリーズ・あしたの料理(テキストは未来の書店でお求めいただけます)
はい、きょうは、ペルソナを作りまーす。
みなさんもご存じの、仮想の人物像ですね。
人格をまるまる作るというと、なんだか豚の丸焼きを
作るみたいな大変なことだと思うかもしれませんけど、
いくつかの基本さえ押さえておけば、案外簡単なんです。
そんなに大変な道具はいらないですし、ぜひ一度ご家庭でも
お試しいただければとおもいます。
ではまず、材料からご説明いたします…というのが
いつものはじめ方ですけれども、
今回からは、このスタイルはやめにしようと思います。
アジャイルな開発手法をペルソナ料理に適用するなら、
最初に材料をすべて決めてしまったり、分量をはかって
おくことには、あんまり意味はないんですね。
あくまでも、そのつど臨機応変に対応していきましょう。
ですから、はい、まず、お鍋を用意しまーす。
ペルソナですから、なるべく大きなお鍋にしてくださいね。
このお鍋を、なにも入れないで強火にかけまーす。
ご近所で核実験がある方は、火にかける代わりに、
お鍋を爆心地から1キロくらいのところに置いておいて、
実験がおわってから回収してお使いいただいても結構ですよ。
こうして、表面にあらわれた模様から、
顔にみえるところを探してください。
ほら、こんなふうに、顔にみえるところがありますねー。
たいてい苦悶の表情になってますけど、これは気にしなくて
結構です。ここから、ペルソナの土台を作っていきましょう。
土台をつくるには、小麦粉を使います。
ガラスの板の上になるべく細いラインをつくって、
ストローで鼻から、こんな風に吸い込んでくださーい。
(sniff)
そうしましたら、いろいろ見えてくると思いますので、
あとは直観にしたがって、ひからびたパン種に
ボールペンで思いついたことを書きこんでください。
これがペルソナの記憶になるんですね。
それから、これを30分ほど放置しまーす。
さて、こちらに30分ほど放置したものがあります…という
風にしたいところなんですけれども、ペルソナというのは
ひとつひとつがまったく別のものですから、あらかじめ
同じものを用意しておくということができないんですね。
ですから、これから30分、あのこれ録画じゃなくて生ですので、
テレビの前でじっと動かずに、おまちくださいねー。
(30分経過)
はい、そろそろ虚ろな表情から戻っていただいて大丈夫でーす。
こうして、人格が記憶とよくなじみましたね。
もぞもぞ動き始めたのがわかりいただけるとおもいます。
苦悶の表情をうかべてますけど、気にしなくていいですよー。
トラウマがちょっと薄れているところがあると
思いますので、ナイフでなぞって、深くしておきましょう。
これでペルソナの完成です。
はい、ではこの、できあがったペルソナを、どなたか、
観客席のかたにチューリングテストしていただきますね。
そちらの……その、白いシャツと青い皮膚の方、
どうぞこちらへ……お名前うかがってもよろしいですか?
(以下、観客とペルソナの会話)
「こんにちは」
「こんにちは」
「さようなら」
「さようなら」
来週は、ご家庭でも簡単につくれる独立法人のレシピを
ご紹介します。お楽しみに!