ストレージ・ネットワークにIPを利用するメリット
ファイバーチャネル(FC)を利用したSANが脚光を浴び、普及の兆しが見えた頃、ストレージ・ネットワークの構築にFC技術を利用するのは考え物だという意見が挙がった。このような意見が出た背景には、FCはそれまで使われてこなかった新しい技術であり、新技術に対する不安があったのと同時に、既に普及していたIPを利用するネットワーク技術が何故ストレージ・ネットワーク構築のために利用できないのかという素朴な疑問も含まれている。
確かに既に確立された技術であったIPネットワークをそのままストレージ・ネットワークへ応用するほうが、ユーザーのネットワーク管理の負荷軽減と言う観点ではメリットがある。これは「2つのネットワークの管理」というお題目でIPネットワーク派の皆様が当時よく取り上げた課題点である。ストレージ・ネットワークにIP技術を利用するメリットには図8-1にも示すように以下のようなものが挙げられる。
- 調達コストが安くできる
- 既に保有しているスキルを活用できる
- 既存のIP機器など施設を活用できる
- 接続距離制限がない
種類が豊富で価格が安いIP機器
ファイバーチャネルは新しく世に出た技術であったため、機器を製造するメーカーも少なく、IP機器に比べると製品価格は相対的に高いものであった。これに対してIP機器を製造するメーカーは多く、かつ世界中に存在するため、製品は豊富に存在し、価格的にも廉価なものが数多くある。
よく話のネタで引き合いに出されたのは100Mbitイーサネット・カードとLANで使うハブの価格だ。例えば100MbitイーサネットのNIC(ニック:Network Interface Card)を東京の秋葉原や大阪の日本橋で探すと、千円でおつりが来る値段で販売されており、よりスピードの速い1GbEのNICであっても、数千円で購入できる。かつLAN用のハブも、これまた安い物であれば数千円~1万円以下で手に入る。これに対してFC SANの構築を行なおうとすると、ネットワーク機器費用が数十万円を下ることはまずない。時には数百万円、数千万円かかることもザラである。1万円以下でFC用のHBA(Host Bus Adapter)カードを探すことは非常に難しい。第一、FC用のHBAカードを秋葉原の電気店で探すこと自体至難の業であろう。