ITどころではない?復旧と復興の温度差
訪れる先々に、「被災地」とひとくくりにはできない被害レベルの違いがある。今回の震災ではSNSをはじめとするインターネットの情報伝達が大きな力となりもしたが、電気をはじめとするライフラインが一切断たれた被害のひどい沿岸部ではむろん、ITどころではない。
だからといって、圧倒的な被害の前にITは無力というのも早計だ。人的被害もほとんどなかった仙台市中心部ではすでに復興のフェーズに入っている。同じ被災地といっても、復旧が必要な地域と復興が必要な地域でそれぞれの対応をしていかなければならない。
そして、まだ復旧が進まない地域に、現時点でITにできることはあるのだろうか?
「被害の大きい地域については、ITそのもの以前に、ITの知識が必要」―そう語るのは、やはり仙台市泉区に拠点を置くサイエンティア 代表取締役の荒井秀和氏だ。
「ITのわかる人が現地に行くということが必要になってくるでしょうね。名簿ひとつ作るのにしても人が必要。エクセルが使える人、データベースを作れる人。被災者の資産管理もあるでしょう。日々、いろいろなデータベースが必要になってくる。ITがあってもセットアップができない。そこができる人が必要なんですが、なかなかうまく回らないですね」
ハードウェア、ネットワーク、アプリケーションなどのITは必要不可欠ではあるが、それを臨機応変に、的確に使いこなせる“人”が現場にいて初めて、有効に機能するのだと荒井氏は語る。
「被災地で今やらなければならないことは、すべてが非日常的で突発的な仕事ばかり。さまざまなITツールを駆使して、少しでも早く正確に処理できる知恵と技能を持った“人”が現場にいる必要がある」
サイエンティアでも、支援の形を考えてはいるものの、全国にクライアントを相手にビジネスを続ける中、ボランティアベースだけで支援をすることは難しいのだという。