3.11後もITシステム全般に根本的な変化は発生していない
今回は前回の続きとして、3.11後の企業とITのあり方において、スマートフォンという切り口からどのようなアプローチができるのか、あるいはスマートフォンというビジネステーマが3.11によりどのような影響を受けたのかについて考えていきたい。とはいえ、単純にスマートフォンにすれば全ての問題は解決、などという話にはならない。
まず、震災とIT投資動向とのテーマで興味深い調査レポートが出ていた。良い補助線となるので簡単にご紹介したい。
IDG社が4月冒頭に行ったITの投資動向についての調査だが、震災についてIT投資が質的に影響を受けたか、現行の検討プロジェクトへの影響があったかの設題について、ほぼ半数が基本影響はないと回答しており、影響があると回答したところも全体の4割(影響があると回答した半数のうちの約8割)が、最大半年の期間延期に留まっている。また、BCP関連のテーマでもさすがに既存計画の見直しや積み増しをした筋は多いものの、半数弱が特に影響はないとしている。
つまり、本レポートの結論としては、危機管理体制の引き締めやブラッシュアップは必要なものの、震災を機にITシステム全般に根本的な変化が発生しているとは考えづらいと読みとれる。
この結論は、既存の体制が相応に機能したと考えると決して悪いことではない。工場家屋ごと潰れてしまった、流されてしまった被災地のケースなどを除くとIT基盤は稼働維持、機能維持という課題については、さすがに発生直後は不備があったものの一定の役目を果たしたとも言えるだろう。
また、震災後の意識変化や、各社の動きを整理していると、5月末現在では以下のようにまとめられる。
●震災直後のショック的症状と緊急対応は一応の区切りを終え、業務をいつも通りしっかり遂行していくことに主眼が移ってきている
●首都圏および全国的なテーマで捉えると農業産品の放射能リスクや風評といった悩ましい課題は残るものの、IT関連に関わる企業経営の課題としては電力に話題の中心が移ってきている。
●数年内にM8規模の余震が来る確率が8割ともそれ以上とも言われていることも踏まえ、地震のような地域局所的なリスクを避けるため、関東圏意外に引っ越し範囲を広げてのデータセンターの地域分散や、自社社屋に保有していたコンピューターシステムを耐震基準を備えたIDCに移設する動きが強まっている。
加えて、全体トレンドとまでは言えないが議論が増えているのが、在宅勤務遠隔業務などオフィス機能の低下や分散状況への対応検討する動きである。ベンダー側もいわば旬なテーマとなるため営業活動も活発化している。(次ページへ続く)