iPadが登場して約一年。iPadはPCを100%置き換えることを狙ったものではないし、実際にそういう使い方をしている人も少ないにも関わらず、少し前に一世を風靡したネットブックは、どこかに消え去ってしまった。そして、ネットブックが姿を消した代わりに、各通信会社からiPadに似たタブレット端末が続々と登場してきた。Googleが提供するAndroidというOS を搭載したものだが、残念ながら似て非なるものと言わざるを得ないのが実情である。
なぜビジネスでiPadなのか?
なぜiPadなのか、どういったシーンで活用されるのか、ということが重要なポイントになる。私は、2010年に出版した『iPad onBusiness』(翔泳社)の中で、「iPadには限界がある。だからいい」ということを書いている。ここで書いていることは、例えば営業マンのワークスタイルを変えよう、ということだ。
最近では、ノートパソコンを持ち歩く営業マンが増えている。それでプロジェクターに接続してプレゼンテーションを行なう人もいるだろうが、多くは空いた時間にカフェにでも入って、資料作りをしている。営業が本業であるにもかかわらず、Excelを駆使して資料を作成している営業マンは多い。これは、本当に営業マンのあるべき姿なのだろうか。営業マンは、もっと営業に時間を費やすべきなのではないだろうか。
製薬業界でiPadをドクターに見せる
ある製薬会社では、MR(医薬情報提供者)に目的を限定した上でiPadを支給し始めている。今まで支給していたノートパソコンは、VPN経由で全ての社内システムにアクセスすることができるわけだが、iPadでは会社のメールを見ること以外を認めていない。メールを見ることは、ノートパソコンを立ち上げるよりもずっと速いため、MRはたびたびiPadをスリープから起動させる。10秒もあればメールを見ることができるから便利だ。ちょっとした待ち時間にでもチェックすることができるため、急に担当医から約束の時間変更を求められても対応可能になった。
一方で、ノートパソコンはどうしても社内システムにアクセスしたいときにしか使わなくなったため、朝一番や終業時に使うツールになった。つまり、時間のメリハリがはっきりしてきたのだ。今までは、30分あればカフェに入り、ノートパソコンを開いていたのだが、今はiPad を開いてメールを処理する。返信するものがあったとしても、5分、10分もあれば足りる。空いた時間は、iPad の中に入れてある学習用の資料をチェックする。あるいは、担当医にプレゼンテーションするための資料を確認しておく。MRは自社製品だけを理解していればいいわけではないため、競合品についての情報もiPadに入れておくことで、すき間時間に繰り返し確認することができるので、効率的に活用できる。
プレゼンテーション=プロジェクター投影と考える人が多いが、日本で多くの営業マンは、1 対1、あるいは2、3 人の少数に対してプレゼンテーションをすることがほとんどだ。だから、ノートパソコンよりもiPadの画面で見せる方が効率的なのだ。小さな文字は二本指で広げれば大きく表示されるということも大きい。(次ページへ続く)
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大木豊成(オオキトヨシゲ)
イシン株式会社 代表取締役シンガポール大学(現NUS)卒業
米国PMI認定Project Management Professional取得ソフトバンク株式会社で、Yahoo!BB事業立ち上げ、コンタクトセンター立ち上げ、おとくラインサービス立ち上げなど、事業・会社とサービスの立ち上げを担当。現在は「人と会社...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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