照合順序のコンテキスト
このように、Contained Databaseにおける照合順序は、通常のデータベースの照合順序とは異なり、依存関係の問題を解決してくれます。しかし、Contained Databaseがインスタンスの照合順序に依存しなくなる一方で、若干注意すべき点もあります。
SQL Serverでは接続先のデータベースを USE句を使用して切り替えることができます。そのため、接続先のデータベースをContained Databaseから通常のデータベースに変更することや、通常のデータベースからContained Databaseに接続を変更することが可能です。
USE句を使用して異なる照合順序のデータベースを行き来する場合、照合順序はクエリバッチが開始されたデータベースのものが使用されるという原則があります。クエリバッチを開始したデータベースから他のデータベースに変更しない場合、この原則はとてもシンプルでわかりやすいものですが、Contained Databaseと通常のデータベースをUSE句を使用して行き来するような場合、照合順序に関する動作は若干複雑になります。
例えば、インスタンスの照合順序が大文字と小文字を区別する照合順序で、Contained Database(データベース名MyCDB) の照合順序が、大文字と小文字を区別しない設定の環境があったとします。この環境で以下のクエリを実行すると、データベースMyCDBで実行されるクエリ (SELECT * FROM #a) はエラーとなります。
USE tempdb; GO CREATE TABLE #a(x int); GO CREATE TABLE #A(x int); GO INSERT INTO #a VALUES(1); GO INSERT INTO #A VALUES(2); GO USE MyCDB; GO SELECT * FROM #a; GO 実行結果 Msg 12800, Level 16, State 1, Line 2 The reference to temp table name '#a' is ambiguous and cannot be resolved. Possible candidates are '#a' and '#A'.
なぜでしょうか。これは、前述の “照合順序にはクエリバッチが開始されたデータベースのものが使用される” という原則に起因しています。
USE句でtempdb接続した後に作成された一時テーブル#a、#Aは原則にのっとってインスタンスの照合順序 (正確にはtempdbの照合順序) が使用されます。インスタンスの照合順序では、大文字小文字を区別するので、それぞれのテーブルは別のものとして扱われるのですが、USE句でMyCDBに接続が変わった後、大文字と小文字を区別しない照合順序に変わります。その結果、クエリで指定している一時テーブル#aは、前にtempdbに作成した#aと#Aのどちらのテーブルを参照すればよいか、 SQL Serverが判断できなくなるのです。
このように、USE句を使用してデータベースの接続先を切り替える場合は、若干の注意が必要ですが、Contained Databaseにおける照合順序を理解していれば、それほど難しいものではありません。総じて Contained Databaseの照合順序における動作はシンプルで有益なものです。
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今回は、従来のデータベースが抱えていた照合順序に関する問題がContained Databaseでどのように解決されるかを見てきました。Contained Databaseでは、照合順序以外にもインスタンスとの依存関係による問題を解決してくれます。ほかにもいろいろと紹介したいことはあるのですが、残念ながら紙面が尽きたようです。Denaliに関する情報は弊社からいくつか公開されていますので、興味のある方は、是非調べてみてください。 次回の記事では、Denaliの新メモリアーキテクチャについて取り上げます。お楽しみに!