「選択できる、最適な組み合わせ」で導入効果を最大限に発揮
佐々木 ユーザーのセキュリティに対する要望や反応はいかがですか。
高倉 クラウドについて勉強し、導入を決断した時点で、心理的な不安は消えているように感じます。一方、パブリッククラウドのようにサーバーがどこにあるのかわからない、自分たちでコントロールできないというような具体的な不安は、私たちが担保すると明言できれば払拭できると考えています。たとえば、回線が不安なら、お客様の回線を引き込むなどの対応も柔軟に行なっていますので、解決策があるというのは、大きな安心材料になっているのではないでしょうか。データセンターも都内4箇所にあり、どこでクラウドサービスが提供されているかも明らかにしています。震災以降は地方への分散ニーズも高まっていますので、今年6月には大阪にデータセンターを開設し、クラウドサービスについても提供を開始しました。
佐々木 様々なクラウドビジネスが登場していますが、活用において、どのような選択、最適化が必要だとお考えですか。
高倉 基本は企業規模でといわれますが、むしろサービスやシステム規模が指標でしょう。ある程度の規模なら自前で用意した方がコストメリットがあることも少なくありません。ただし、サービスやシステムに伸び縮みがあるところは、クラウドを使いながら調整し、確定的になったら自社資産での構築・運用へ移行するなどの柔軟な対応になると思います。
佐々木 ポートフォリオのように組み合わせを考えていくわけですね。
高倉 そうです。サービスやシステムの特性・ライフサイクルに合わせてコントロールできるインフラでなければ、コストの最適化は難しいと思います。また、どの領域に使うのかでも選択肢は変わってくるでしょう。グループウェアのようなツールは、Google Apps等のSaaSに移行する部分もあるかもしれませんが、業務・基幹系システムやWebビジネスでの活用などでは様々な選択肢から使い分けたり、組み合わせたりというのが、少なくともここ数年のトレンドになるのではないでしょうか。
正直、将来的なクラウドの全体像は私にもわかりませんが、現時点ではクラウド単体で完結はしないと思っています。システムは新旧あり、コストモデルも異なり、それぞれに対応するサービスが複数あって、自由に行き来ができるのが理想的で、本質だと思っています。
佐々木 すべてがクラウド化するまでの過渡期はかなり長いと予測されますが、ソフトランディングは大きな課題です。ハードは売れなくなるし、システムエンジニアもこれまでとは発想を変えていかなくてはなりません。
高倉 クラウドコーディネーターなどへのシフトもあるかもしれませんね。システムインテグレータも「好機」と捉えて動き始めたところもあるようです。クラウドを運用やメンテナンスなど、囲い込みのためのツールと考えることもできますから。ユーザーも、しばらくは既存システムはラックを借りながら、新システムはクラウドでといった“ハイブリッド”な環境は続くでしょう。連携が悩ましい課題ですが、当社のような両方のサービスを持つベンダーであれば、シームレスに連携させることも可能です。
環境構築とビジネスの二極化へ、身軽さで高まる国際競争力
佐々木 米国のように企業の淘汰を早められれば、新たな企業が起業時点からクラウドなどの新しいツールを導入し、急成長することで、国際競争力が高まるといわれています。日本では、既存の企業がタイミングをみながらクラウドを導入し、再構築するということになりそうですね。格差や社会不安などを鑑みれば、変化は穏やかな方がよいのでしょうが、急速な国際化に対応するためにはそうもいっておられません。できるだけ迅速に移行するためにも、日本のベンダーの効率的かつ精力的なサポートが必要です。
高倉 はい。インフラをユーザーの企業活動の足かせにしてはならない、「心配せずに仕事に注力してください」といえる存在でなくてはと思っています。
佐々木 ITビジネスは徐々にレイヤーが上がっていくという性格を持っています。以前は自分たちで環境を整えていたものが、徐々に仮想化されてコモディティ化していく。たとえば、80年代のプラットフォームはハードでした。それがOSになり、ブラウザになり、5年後はSNSがそれに取って代わるかもしれません。サポートする側はそのレイヤーに一緒に上がりながらサービスを考える必要があります。ユーザー側も自分のコアコンピタンスを意識しながら、それ以外はアウトソーシングを行い、身軽な状態で勝負していくことになるでしょう。究極的には、大規模な環境ベンダーとスモールビジネスという二極化が進みそうです。
高倉 そうですね。技術やリソースを抱えるのは当社みたいなところにお任せいただき(笑)、ビジネスに邁進していただきたいですね。かつてクラウドが、データセンターやホスティング事業者の脅威になるのではないかと危惧されたことがありますが、我々もプロアクティブに考えて決断し、現在の答えを出してきました。その結果、これまで接点のなかったユーザーからもお声がかかるようになり、新たな可能性の扉を開いたように感じています。
佐々木 ぜひ、日本企業のためにも活躍を期待しております。本日はありがとうございました。
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