バックアップ製品が売れる背景
3月の震災後、「事業継続」というテーマが盛んに叫ばれるようになった。情報システム担当者の意識を問う各種調査でもテーマに対する関心の高まりをうかがわせる結果が出てきている(図1)。
そうした中、今、最も大きく伸びているのがストレージ機器だ。災害時にサーバーが壊れてしまっても、とりあえずデータだけは保護できるようにしておかなければならないと考えた情報システム担当者が、データのバックアップ先としてストレージを購入している。バックアップ用のストレージ機器は震災後、前年比150%を超えるペースで売上を伸ばしているベンダーも出てきている。
今更、バックアップが問題になるのかと思われる方もいるかもしれないが、企業内の情報システムのうち、その対象となっているのは基幹系などごく1部に過ぎない。一般的に、欧米と比較しても日本のバックアップ取得率は低いと言われており、筆者の経験に照らしても、仮に100のシステムがあるとすれば、バックアップの対象となっているのは、そのうちの20程度にとどまるのではないだろうか。特に、バックアップ対象外になりがちなのは、情報系システムや部門内のファイル共有サーバーといったものだ。
もちろん、そうしたシステムのバックアップを取得しなくてよいのかと言われれば、決してそんなことはない。ただし、バックアップ自体はあくまで保険と同じ性質のもの。例えば、誰もが生命保険や地震保険の重要性は認識しているが、差し迫った事情がない限り、月々の出費を嫌って加入しない人も少なくない。実際、ストレージベンダーはこれまでもバックアップ製品の売り込みをかけてきたが、ユーザーにはなかなか響かなかったという経緯がある。もちろん、今回の地震を機にやはり地震保険は重要だから加入しておこうと考える人もいるはずだ。同様に災害対策のために「とりあえずバックアップをとっておこう」と各企業の担当者が動いているのである。