メーカーはBCP、電源管理へ注力
さて、本稿の主題である運用管理について言えば、震災による影響というものはほとんど聞かれない。各ソフトウェアメーカーはBCP(事業継続計画)の観点からクラウドや仮想化を利用したシステムへの移行とそれに伴う運用の見直し、あるいは消費電力削減を実現するためのPC 電源管理、さらにはビル全体の電源管理といった切り口での展開を開始している。しかし、データを保全するバックアップ関連製品と比較すると、優先順位が低くなりがちであることは否めない。ストレージへの投資を行っているユーザー企業の方が多いのが実情だ。
しかし、このようなタイミングだからこそ、筆者はあえて運用管理という視点の重要性については強調しておきたい。事業継続であれ、災害対策であれ、情報システムに関する取り組みを進める以上、運用管理は常について回る。例えば、現在注目を集めているストレージやクラウドといったキーワードはあくまで手段に過ぎない。導入しさえすれば目標が達成されるというものではない。その真価を引き出すためには運用管理という視点が必要になる。その仕組みは本当に回るのか?
例えば、皆さんが担当する情報システムの中にはバックアップや災害対策用の仕組みを備えているものがあるだろう。では、今、サーバーが壊れてしまったとして、取得しているバックアップデータを使ってシステムを復旧するためにはどれくらいの時間がかかるだろうか? 災害対策サイトへの切り替えと置き換えて考えても良い。
具体的な数字がすぐに出てきた方は優れた運用をしていると言えるが、意外と「すぐには答えられない」と考えた人も多いのではないだろうか。筆者は長年にわたってストレージ製品市場の調査のためにユーザー企業を取材してきたが、相当数の企業がバックアップを取得していると答えるのに対し、リストアに備えて検証やトレーニングを定期的に行っているケースは数%程度でしかなかった。
バックアップは障害が起きた時に備えて取っておくものなので、何らかの課題を抱えているとしても、それが必要になるまでは表面化しない。しかし、トラブルが発生した時に運用手順書を探すところから始めなければならなかったり、原状回復できるかが分からなかったりするようでは話にならない。また、ビジネス上の要請で2日以上停止することが許されないようなシステムの場合、データをリストアするために3日かかってしまうというのでは本来の目的を達成できているとは言えないだろう。