Azureで実現した大規模ECサイト"ムビチケ"の衝撃 - システムコンサルタント
今年8月、角川グループによる映画の前売券販売サイト「ムビチケ」がオープンした。前売券販売と座席指定を同時に行うWebサービスはこれまで存在していなかったこともあり、一般紙などでも大きな話題になったが、IT関係者を驚かせたのは、このシステムがWindows Azure上で構築されたBtoBtoCサービスであった点だろう。パブリッククラウドのWindows Azure上で、ここまで大規模なECサイトを構築した例は、日本ではもちろん初めてである。
このムビチケのシステム構築を担当したのが、今回「Windows Azureプラットフォーム パートナー アワード」を受賞したシステムコンサルタントである。同社は長年に渡って.NETプラットフォームの開発に携わっており、Azureについては2009年から関わってきている。
つまり、技術力の蓄積は十分にあったわけだが、「BtoCのバックエンド構築の経験はあったが、ここまで大規模なBtoBtoCシステムの構築、それもAzureでカットオーバーするのは初めてで、多少は不安があったことも事実」と小谷氏は振り返る。
システムコンサルタントがムビチケ案件の打診を受けたのが2010年秋のことだったという。顧客の要望は「できるだけ早く、そしてできるだけ安く」ということ。概要を聞いた坪田氏は「パブリッククラウド、それもAzure以外ではありえない」と直感したという。
「クラウドかオンプレミスかどうかがよりも、新規事業であるため早くて安いことが何より重要だった。いちおう、お客様にはオンプレミスの見積もりも提示したが、圧倒的なコストの違いもあり、Azureで構築するという案を受けてもらえた」(坪田氏)
コアの開発にかかった時間は約3カ月というスピードだったが、これもクラウドのメリットを十分に活かした結果である。「震災がなければもっと早くサービスインすることが可能だったと思う」と小谷氏。
もっとも開発において不安がないわけではなかった。Azureによる初の大型ECサイトというプレッシャーもあったが、「Azureの性能をいかに引き出すか、サービス料金を最小に抑えるにはどうしたらいいか、運用を最適化するには……など、いくつかの障壁があった。だが、こちらの経験不足はマイクロソフトのコンサル支援が補ってくれて、非常に助かった」と坪田氏は振り返る。
クラウドサービスはカットオーバーしてからが本番とも言われるが、「結果から言うと、カットオーバー後、大きな事故はほとんどない。運用におけるトラブルが非常に少なく、当社はアプリケーション開発に集中することができる。Azure自体の事故はテスト期間を含めて一度も起こっていない。いかに安定したプラットフォームであるかを実感した」と、Azureの運用面での負担の少なさを強調する。
「これだけ大きなシステムがクラウド上で動くということを実証できた。アワード受賞は非常に嬉しく、誇りに思う」と小谷氏。
今後はパブリッククラウド上での提供だけでなく、オンプレミスとのハイブリッドとしてもシステムが育っていく可能性がある。大規模アプリケーションサイトをAzureで構築できることを日本のみならずグローバルに示したムビチケの意義は、同社だけでなくマイクロソフトにとってもこの上なく大きい。さまざまな意味でAzureの可能性を拡げた非常に意義のある事例であり、受賞は当然だったと言えるだろう。