「現在、Microsoft Dynamics CRMはワールドワイドで200万ユーザ、40の言語/80カ国で利用されている。ここ1、2年の成長率は、CRM製品としては業界トップだ」と最大のライバルであるSalesforce.com(以下、SFDC)への強い対抗意識を隠さないのは米マイクロソフトコーポレーションでCRM Sales Enablement Leadを務めるチャド・ハンブリン(Chad Hamblin)氏だ。
エンタープライズへの導入が進むDynamics CRM
Dynamics CRMの戦略を俯瞰するとき、とりわけ最大の競合相手であるSFDCと比較するときは、Dynamics CRM全体(オンプレミス+クラウド)と、クラウド版のDynamics CRM Onlineだけに限る場合に分けて考える必要がある。とくに導入企業の規模やユーザ数など統計上の数字を見ていくときは注意したい。
ハンブリン氏はDynamics CRMが導入企業数を急激に増やしている最大の理由として「(既存MS製品との)インテグレーションやカスタマイズが必要なエンタープライズ企業による大規模導入」を挙げる。とくに1万ユーザ規模の導入事例が欧米を中心に着々と増え続けており、たとえば英バークレイズ銀行(1万7,000)、米国農務省(1万7,000)、米国空軍(2万5,000)、英国労働年金省(3万)などへの導入はその最たるものだろう。
ただし、これらの大規模導入事例はすべてオンプレミス版によるものである。クラウド版であるDynamics CRM Onlineは、中堅企業への導入が中心で「5,000ユーザを超える事例も出始めている」(ハンブリン氏)とのことだが、大半を占めるのは100 - 500ユーザ規模の案件である。もっとも逆の見方をすれば、SMBでも導入しやすい価格であるということでもあるのだが、やはりクラウドでありながらワールドワイドでの大規模導入事例をいくつも誇るSFDCと比較すると、すこしさびしい感じがするのは否めない。