クラウド環境で新たに生まれる課題にも両社で積極的に対応したい
今後普及が加速するクラウドへの対応について、藤井氏は、「クラウドという言葉は、みんなが同じ意味にとらえているとは限りませんが、Systemwalkerとしては、構成する要素となる物理環境も仮想環境も、トータルで運用監視できるように、より一層強化していきます。重要なのは、お客様にとって、マルチベンダーのハード、OS、ミドルウェアを組み合わせるなど、さまざまな選択肢があること」と語る。
Systemwalkerとしては、システム全体を管理するために、Hyper-VやVMwareなどもOracle VMと同様に監視できるようになっているとのこと。そのような中にあっても、12cの機能強化により、Oracle VMについてはEMから詳細な情報が得られるようになるのならば、仮想OSのより効率的な運用をお客様へ提供できるようになるだろうとのことだ。
また、12cでは、クラウドのマルチテナントサービスで必要になるセキュリティ機能も強化され、例えば認証機能(LDAP/SSHキー/Kerberosチケット/カスタム認証)のサポート強化や権限設定をより詳細(ロール設定)に行えるようになった。さらには、クラウドの課金管理を実現できる仕組みも提供される。これについて藤井氏は、「プライベートクラウドなどでは、利用者単位ごとに細かいレベルでリソース管理できる機能は重要」だという。データベースをより細かい単位で管理できるようになることは、部署単位などでどのリソースをどれだけ使ったか、そこに無駄はなかったといったことが分かることになり、業務という視点からもクラウドシステム全体の効率的な運用につなげられる。
Oracleとともに運用管理の標準化も検討したい
近年、クラウドという要素が入ってきて、システム環境が多様化、複雑化したため、ICTによる運用管理担当者への支援がより重要になってきた。そのため、運用管理ツールが自動的に判断し、課題を解決する機能が今後重要になってくる。
とはいえ、一方で自動的に課題が解決することで「問題が何で、どこにあったかが分からなくなる危険性もある」と藤井氏は指摘する。便利な自動化がブラックボックス化になっては困る。「今後は、自動化部分の見える化も重要な要素。SystemwalkerとEMの連携の中で、こうした部分の見える化も実現していきたい」(松石氏)。
さらに、クラウド環境のように、複数のシステム要素が関連する場合には、システムからのメッセージも複数出てくることになる。1つ1つのメッセージの意味と対処法は正しいとしても、それが複数ある場合には意味が異なるかもしれない。「メッセージが同時に複数出てきた際にどう対処するかは、課題です」と藤井氏。1つ1つのメッセージへの対処は自動化しやすいが、複数同時に出てきた際にはどれを優先すべきか、そもそも個別に提示される対策を実施して問題がないのかの判断は、現状では人が行うことになる。
Systemwalkerでは、複数のメッセージが同時に出てくるような場合にも、管理者がシステム全体を安定して運用できるようサポートしていきたいとのこと。そのためには、「システム運用管理手順や管理ツール機能の標準化的なことも、今後は検討する必要があるでしょう。これについては、富士通だけでなくOracleと一緒に進めて行ければと考えています」と藤井氏は言う。
「日本のシステムの運用監視レベルは、極めて高いものがあると思っています。そういった高度な運用管理ノウハウや技術を、海外にも展開できればと考えています」と横尾氏。SystemwalkerとEMを連携させた高度な運用管理を海外展開する日本企業へ導入していくところから始められればとのことだ。