会員数10億人のグローバルオペレーションを構築する
mobidec2011の基調講演ではまず、グリーの田中良和社長が登壇し、同社のソーシャルビジネスの現状と今後の展開について語った。現在の業績は堅調で、一部に「モバイル市場は飽和している」という見方もあるが、グリーの四半期ごとの伸びを見れば、まだ成長の余地があることが分かる。グローバルのインターネットビジネスの会社の時価総額比較で、グリーは12位。世界で1億5,544万人のユーザーを抱えている。田中氏は「ソーシャルネットワーク、アプリケーションプラットフォーム、ゲームの3つを、垂直統合型で行っている会社は、世界でも例が無い」と分析している。
2011年下半期のハイライトとして、まず田中氏が紹介したのは、グローバル体制の構築だ。北アメリカ、中国に続き、アジア、ヨーロッパ、南アメリカ、中東に拠点を設立する。また2011年に入ってから、スマートフォンビジネスに注力している。日本では659本のアプリを提供しており、そのうち200本が課金アプリだ。スマートフォンユーザーの増加、利用の活性化により、マネタイズが進展している。スマートフォンアドネットワークや、リワード広告が順調に拡大中だ。
今後の事業戦略としては、2012年前半にグローバルなワンプラットフォームの提供を開始する。約19,000社のデベロッパーネットワークがグリーの開発パートナーに統合されることになる。
グリーといえばソーシャルゲームの会社というイメージがあるが、必ずしもそれだけにこだわっているわけではない。今後、インターネットを通じて社会に貢献するさまざまなサービスを提供していきたいという。
最後に田中氏は「現在、日本で生まれたサービスで、世界中で使われているものは一つもない。全世界、10億人を対象にしたサービスを作り上げたい」と述べ、講演を締めくくった。
新たなビジネスフィールドを創出・拡大
続いて、ミクシィの辻正隆氏が登壇。「進化する『mixi』の近況と今後の方向性について」と題するプレゼンを行った。『mixi』は月間アクティブユーザー1,500万人を超える国内最大級のSNSだが、ユーザー属性、デバイス別アクセス状況の現状を見ると、スマートフォンのユーザー数が順調に増加し、PCと同等水準まで成長してきた。年内には500万人に達する見込みだ。
スマホに関する直近の取り組みとしてはまず「利用シーンの拡大」ということで、友人と繋がる楽しさをテーマにセレクトしたホーム画面を提供。9月21日には、WindowsPhone向け『mixi』アプリの提供を開始した。また、スマートフォン開発を強化するため、ベンチャー企業のネイキッドテクノロジー社を子会社化している。
スマートフォンにおける今後の方向性だが、従来の個人がコミュニケーションできる「Homeエリア」を充実させると同時に、ニュース・コミュニケーション・アプリ・ページなど、ユーザー全体で盛り上がっているネタや、自分に興味ある情報を得る「Townエリア」を、もう一つの軸として強化する。
8月31日にサービスインした「mixiページ」は、企業や個人がmixiの中に無料で設置可能な情報発信ページ。約13万のmixiページの開設状況を見ると、ページオーナーは法人35%、個人65%。
モバイル版が先行し、12月からPC・スマホ版が出る『mixiゲーム』を開始した背景について辻氏は「ソーシャル性の高いアプリが充実する中、ゲーム系アプリを切り出して提供することで、ゲーム利用意向の高いユーザーへのアピール力を強化するため」と解説した。
最後に辻氏は「マーケティング支援事業、コンテンツ課金事業、コマース事業など、プラットフォーム拡大、進化により、新たなビジネスフィールドを創出・拡大したい」と抱負を述べ、プレゼンを閉じた。
総合的なプラットフォーム戦略で世界市場に打って出る
最後にディー・エヌ・エーの小林賢治氏によるプレゼン「スマートフォン時代に向けたmobageの戦略」が行われた。DeNAでは、フィーチャーフォン向けに作ったタイトルをスマホに移植する「ExGame」と、OSや地域展開面で新規開発効率を高める「ngCore」を提供している。
「ExGame」は、Flash lite 1.1相当のファイルをiPhoneブラウザで再生するソリューション。一方の「ngCore」は、米ngmoco社が開発したインタープリター実行方式のJavaScriptゲームエンジンだ。JavaScript One SourceでAndroid・iOSアプリを開発可能で、ネイティブと同様の描画パフォーマンスを実現し、ソーシャル、課金機能とシームレスに連携したアプリを開発可能だ。バージョンアップの差分だけダウンロードすればいいライブアップデート機能も重要な要素となっている。『怪盗ロワイヤル』では、5名のエンジニアにより、アプリ版を5ヶ月程度で開発できた。
ソーシャルゲームはパッケージゲームとは違い、継続利用してもらい、購買意欲を刺激し続けなければならない。小林氏は「DeNAにはゲームチューニングのための情報量と分析力があり、ユーザー数を広げていくコミュニティ運用ノウハウがある」と強調する。たとえば『怪盗ロワイヤル』では、「お宝コンプリート」の難易度調節が適切だからこそ、成功している。ソーシャルゲームは、「情報分析」と「改善」が鍵を握っているビジネスなのである。分単位/ユーザー単位の運営をすることで、コミュニティとゲームが相互に影響することに成功している。
DeNAのプラットフォーム戦略では、ゲームデベロッパーの各国への展開と多種類のOS対応をサポートし、自社開発ゲームで得たノウハウを還元している。最後に小林氏は「エコシステム全体として世界に打って出たい。その中心としてモバゲープラットフォームを位置づけたい」と述べ、基調講演を締めくくった。
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