2年前に八子氏が初めて提唱したモバイルクラウドというコンセプトも、今ではすっかり定着し、様々な取り組みが行われている。今年のセッションでは、モバイルクラウドの次のステージの概観と展開可能性について語られた。特にフォーカスされたのは、IDと決済とライフログがクラウド上でやりとりされるビジネスモデルだ。
クラウド市場の主要ターゲットはPCからモバイルに

八子知礼氏のセッションは、クラウド市場の最新動向分析で幕を開けた。現在、パブリッククラウド、プライベートクラウド、共に市場の伸びが急激になって来ている。パブリックではサービス投入時期は終わり、差別化の時代に入っている。興味深いのはソーシャルクラウドの潮流が勃興してきたことだ。八子氏は「コンシューマと法人の領域がクロスオーバーし始めていることが、現在のクラウド市場における一つのポイント」と語った。
Facebookのユーザー数は8億人であり、もし国と考えたら中国、インドに次ぐ世界第3位の経済圏だといえる。8億人が対象であれば、1人あたりの運用コストはきわめて低くなる。クラウドでは規模の経済が働く、という事実が大きなポイントになる。
一方、モバイルの普及台数は50億台を超えており、近い将来、世界の総人口70億を上回る見込みだ。一方、デスクトップPCは10億台近辺で頭打ちになっている。クラウドもモバイル市場をターゲットにしないと成長がない時代になる。
モバイルクラウドではゲームや動画、アプリなどのコンテンツがクラウドで提供され、同時に課金・認証、流通、開発、サポートなどのサービスもプラットフォーム上に載る。アクセスする端末はスマートフォンなどに加え、デジタルカメラ、カーナビなども加わっていくことになる。

またコンテンツ製作から配信までのワークフローを、クラウドを活用して実装する「メディア/コンテンツクラウド時代」が到来する。その全体を司るプレイヤーが、メディア/コンテンツの領域で勝者になる可能性が高い。
また、モバイルデバイスを仮想化し、1台のスマートフォン上に2台分の電話番号とアカウントを持てる技術が登場している。この事実から分かるのは、デスクトップPCで起こったクラウド化・仮想化はモバイルでも起きる、ということだ。一方モバイルクラウドは、場所の制約からの解放をもたらした。さらに様々なメディアが連携し始めており、そのためにコントロールが難しくなっている。
この記事は参考になりましたか?
- mobidecレポート連載記事一覧
-
- Android OS 4 vs iOS 5 ~ ビジネスインパクトを比較する
- モバイルクラウドの将来像 ~ID・決済・ライフログのExchange~
- ソーシャルメディアの特性を生かした日本コカ・コーラのモバイル施策とは
- この記事の著者
-
EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
「EnterpriseZine」(エンタープライズジン)は、翔泳社が運営する企業のIT活用とビジネス成長を支援するITリーダー向け専門メディアです。データテクノロジー/情報セキュリティの最新動向を中心に、企業ITに関する多様な情報をお届けしています。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
-
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア