ビッグデータ時代の到来とクラウドへの期待
鈴木 インターネットやセンサー・ネットワーク、GPS搭載端末の普及などにより、電子的に取得できるデータの量が飛躍的に増大しています。ビッグデータの定義は必ずしも定まっていませんが、なぜ大量なのかを分解すれば、いくつかの要素があることが分かります。私の注目点は高解像度、リアルタイム、多様性の3つ。高解像度とは、従来「30代男性」などでまとめられていた分析対象を、個々にフォーカス可能にするデータを集めるというものです。リアルタイムなデータの高頻度取得という意味で、一日に一回よりも毎秒データを取得した方が、よりきめ細かい対応が可能になります。
次に多様なデータで注目したいのが、写真や動画、自然言語などの非構造化データです。防犯カメラの映像やブログ、Twitterなどで流れているデータを分析すれば、新たなマーケティングの可能性が飛躍的に高まると思います。
中山 全世界の電子的なデータ量は今後10年間で、50倍以上になると見られています。その中で企業が抱える情報量は約2年で2倍になり、その後も加速して増加していくでしょう。同時に、企業が保有可能なデータ量も、クラウドの普及が加わることで、増えていきます。
鈴木 しかし現時点で、非構造化データを含めても、ペタバイトや3桁テラバイト所有している事業者はそう多くはないでしょう。ただ「非構造化データを活用できる」という考え方、ツール、支援する人が増えてくると「それならば、今まで捨てていた非構造化データを貯めて活用しよう」という話になります。すると、今までは捨てていた流れに堰き止めがかかる。そういう土壌になってくるのではないでしょうか。
中山 同感です。ただ、どの程度データ量が増えていくのか、事業者自身は予測が難しいと思います。中には、貯めてみたデータがなかなか活用できないケースもあり得る。そのために高価なストレージを買って置いておくと、資産を無駄にすることになります。そこで生きるのが、クラウドのエラスティック(伸縮自在)性です。ここにビッグデータの時代にクラウドが有効になってくる理由があると思います。
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震災後の企業のクラウドに対する意識の転換
鈴木 東日本大震災以降、クラウドに対する期待が変化したといわれています。クラウドに取り組む目的が、それまでの「コスト削減」に留まらずに、付加価値へと進んだというのはよく言われることですね。
クラウドにおけるもっとも重要なポイントは、性能の高いサーバーを複数のユーザーが割安で使う“割り勘思想”だと考えています。そこで「特に非競争領域は、信頼できるクラウド事業者に預けてしまう」という大きな流れがありました。
一方、貴重なデータについては、他社に預けることに不安を感じていましたが、東日本大震災で、自社のシステムがダウンして、事業継続が困難になった企業も数多くあった。たとえば、屋上の給水タンクが壊れ、天井に入った亀裂から、自社サーバールームに水が降り注いだ、という事例などもあったそうです。そういった経験から、「安心できる事業者に預けた方がいい」というBCPの観点が強くなっているようです。
中山 実際、大震災後のユーザー企業の投資意向調査を見てみますと、震災前は「IFRSへの対応」が経営優先課題の一位であったのに対し、震災後は「災害やシステムダウンへの対応(BCP/DR)が一位になっています。
確かにユーザー企業様のサーバールームやデータセンターの場合、専業ベンダーの施設と比較して、どうしても防災対策が後手後手になってしまうようです。私どものデータセンターでは、耐震、免震などの対策をしています。また電源が絶たれたときのバックアップも万全です。さらに数百km以上離れた東西に分散させており、拠点間でのディザスタリカバリ対応が可能となっています。
ビッグデータ時代にホスティングとストレージサービスをどのように見極めるか
中山 震災後のクラウドへの意識の変化について述べてきましたが、ビッグデータという新たなテーマの面でも、クラウドに対する認識が変わりつつあります。クラウドがビッグデータ活用において有効だという認識が浸透してきました。主な理由としては、企業内の大容量データの増加が予測困難であり、クラウドの柔軟性が効果を発揮することと、大規模なストレージの構築・運用・バックアップ対策、またそれらのための人材の確保などが任せられるという利点が大きいと思います。また、ネットワークとの親和性が高いため、インターネット上など様々なロケーションからのデータ収集が容易であり、ユビキタス環境での利用にも適しているのです。
現在、様々な企業様にクラウドのご提案をする機会がありますが、やはりビッグデータ時代なのか、ストレージの追加をされるお客様が目立ちます。ですから、CPU、メモリはもちろんですが、ストレージ部分をいかにコスト最適化するかが、クラウドを活用する上でキーポイントになってきていると考えています。
NTTコミュニケーションズでは、高い安全性のクラウド・コンピューティングを兼ね備えたビジネス環境を提供するサービス「BizCITY」を展開しています。
その中で、グローバルレベルから仮想マシン単位まで、あらゆる規模のクラウドオペレーションを提供しているのが「Bizホスティング」です。非常に高品質で様々なカスタマイズやオプションが選択可能な「Bizホスティングエンタープライズ」や、コストパフォーマンスが抜群で様々なクラウドサービスの基盤としても最適な「Bizホスティング ベーシック」がお選びいただけます。
そして、ストレージとしては、大容量仮想ハードディスクをギガ単位20円(税別)という安価な定額メニューで提供する「Bizシンプルディスク」があり、「Bizホスティング」とも併せてご利用いただけます。
VPNとの直結による自社と同等のセキュリティ環境で、10ギガバイトからペタバイトクラスまでの大容量データを保管できます。国内データセンターにおける三重の冗長保有により、堅牢性99.9999999999%(twelve nine)の高い信頼性を実現しました。
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OpenFlowなどネットワークインフラとクラウド基盤との連携がカギ
鈴木 通常、クラウドのアーキテクチャでは上からSaaS、PaaS、IaaSという形になっていますが、それもネットワークがきちんとしているのが前提です。そのアベイラビリティ(可用性)を保証できるというのは、通信キャリアならではだと思います。サーバーサイドがエラスティック(伸縮自在)であるというのがクラウドの特長だと言われていますが、ネットワークについても同様なことをお考えでしょうか。
中山 ネットワークをエラスティックにするためには、解決すべき問題があります。確かに仮想サーバー環境において、ライブマイグレーション技術を用いることで、サーバーリソースを別の筐体や別のデータセンターに滞りなく移すことが可能になっています。ただ実際はVLAN(仮想LAN)の設定が違えば、イーサネット上の各拠点のスイッチの設定変更等が必要になるため、スムーズな移行はできません。
そこで重要になるのが、OpenFlowに代表される最先端の仮想ネットワーク技術の活用です。仮想ネットワークによって柔軟に運用ができるクラウド構築が可能となります。程なくOpenFlowのトライアルを開始する予定ですが、これによりネットワーク経路の集中管理が可能になり、各スイッチを必要に応じてファイアウォールやロードバランサー等としても活用可能になります。
私どもクラウド事業者にとっても、ネットワークがエラスティックになるということは、自社で保有するネットワーク機器やその運用コストを大幅に下げられる期待があります。またこのソリューションをお客様に使っていただくサービスの開始を、2012年夏に予定しています。
鈴木 そこが解決すれば、一番大事な処理はオンプレミスで行いながら、あるピークタイミングに機微度が低い部分をクラウドにシームレスに出すことが可能になりますね。そこがセットで使えるということは、大量データ処理時代には、重要になってくるはずだと思います。
処理の見極めということでは、ビッグデータの蓄積と活用におけるホスティングとストレージサービスの見極めについてはいかがお考えでしょうか。
中山 蓄積や配信にはサーバーの処理が入るため、ホスティングを使うことになります。ただ、データ量の増加にあわせてホスティングのハードディスクを増設していくと、コスト負担が大きい。BizホスティングとBizシンプルディスクは併せて利用が可能ですから、フロントサーバーとしてホスティング、大容量データにはクラウドストレージを組み合わせていただくのがお勧めです。
判断の目安ですが、一桁テラバイトの範囲であればホスティングを増減すればいいし、一桁後半になると外付けのストレージサービスが視野に入ることになります。ホスティングとストレージの使い分け、組み合わせがコスト最適化に有効です。
鈴木 現在の流れが進んでいくと、今まで事業部門別や事業所別のサーバーにあったデータが、一つのクラウド、仮想状のサーバーの中に集約されることになります。その結果、そのデータを活用しやすい環境になるということが重要なポイントです。クラウドはデータを貯めておく大きなドンブリであると同時に、仮想的なCPUにより、柔軟な処理を可能にします。大量データの処理に有用な基盤として活用されるものになるのではないでしょうか。
中山 その通りだと思います。私どもが期待しているのは、クラウドをデータ格納のインフラとして考えていただくことだけではありません。先進的で成功している企業は、クラウドを積極的に活用し、運用業務等からICT部門が解放され、お客様のフロントのICT化やマーケティングデータの収集・分析などを強化し、業績を伸ばしています。このように、コスト削減目的、運用中心の「守りのICT」から、ビジネスに貢献するビッグデータ活用等の「攻めのICT」に転換することで、企業のICT部門のパラダイムシフトが起きると考えているのです。
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