世の中では数多くのカジュアルなデータベースが活用されている
DB Onlineではこれまで、OracleやSQL Serverなどエンタープライズ系データベースの話題を数多く取り上げてきた。とはいえ、ビジネスの現場で使われているデータベースは、エンタープライズ系のものばかりではない。Microsoft Accessに代表されるような「カジュアルなデータベース」も、数多く活用されている。こうしたカジュアルデータベースの最新動向はいま、どうなっているのだろうか。また、クラウドコンピューティングも登場して普及しつつあるが、それがカジュアルデータベースの世界にも影響を与えているのだろうか。多くのユーザーがもっとも身近に感じているはずのカジュアルデータベース、その最新動向や実際の活用状況を、今後はDB Onlineでも積極的に取り上げていきたい。
カジュアルデータベースの第一弾として取り上げるのが、ジャストシステムの「UnitBase」。これは、ノンプログラミングWebデータベースとして2011年9月から発売を開始した、まだ新しい製品だ。2012年2月には早くもバージョンアップしUnitBase 2.0の提供が開始されている。専門的な知識がなくても、簡単な操作で目的に合った業務システムを構築できる、というのがUnitBaseの謳い文句だ。
ジャストシステムではこれまで、XML関連や全文検索エンジンなど企業向けソフトウェアの提供をしてきた。とはいえ、データベース製品ベンダーのイメージはない。唯一、Justsystem Officeにバンドルされていた「五郎」というデータベース製品があったが、現在は提供されていない。このような状況のなか、なぜUnitBaseというデータベースを出すことになったのだろうか。
顧客現場のノンプログラミングで作りたいという要望をかなえる
ジャストシステムエンタープライズ事業部 企画部 セクションチーフの星 雅人氏は「2004年ころからでしょうか、顧客からもっと簡単にアプリケーションを作れる環境はないのか、といった相談を受けることがたびたびありました」と振り返る。星氏は当時、営業を担当。顧客の多くが、2000年ころに大きな投資を行い、高額なデータベース製品を導入、さまざまなシステムを構築していた。ところが、それらのシステムが数年を経過した頃から、うまく維持できなくなる。システム構築当初は、構築を担当した開発会社のエンジニアが常駐し、彼らが不具合対応やちょっとした拡張などを行っていた。ところが、数年が経過したころから、コストの問題などもありエンジニアが引き上げてしまうことも多々。そうなると、現状のまま何とか使い続けるしかなかった。
そうこうしているうちに、ハードウェアやOSが更新時期を迎える。なんとか現状のシステムを維持しようと考えあらためて開発会社に相談すると、多くの追加開発が発生すなどの理由により多大なコストがかかると言われる。そうなると、環境更新もままならない状況に陥ってしまうのだ。そのような悩みを抱えていた顧客から「ジャストシステムは製品ベンダーなのだから、プロダクトでこの悩みを解消する提案をして欲しい」と言われたと星氏は振り返る。
また、一方ではMicrosoft Excelを駆使し業務を行っている現場も数多くある。さまざまなマクロを組むことで、Excelでも便利に業務がこなせるようになる。しかし、マクロが複雑化してしまい保守が難しくなることもしばしば。さらには、マクロを組んでいたスタッフが異動になり、その後は既存のマクロに誰も手を付けられない状況も発生する。このような、星氏が営業活動で実際に聞き取った、顧客の現実の課題は、彼の営業ノートに数多く記録されることになる。
その後星氏は、企画部に異動。営業時代に集めた顧客の課題を解決するため、新たな製品の企画を行う。「2004年ころの顧客ニーズでしたが、その後も顧客の状況はあまり変わっていませんでした」と星氏。その課題を解決する製品を考え、その企画が承認され新製品開発が開始。そして、新たなWebデータベースのUnitBaseが誕生したのだ。「顧客からは、ノンプログラミングでアプリケーションを作りたいという要望がありました。その方法をジャストシステムの中で考え、実現しました。もっとも思い入れて作った部分が、ドラッグ・アンド・ドロップでアプリケーションを構築できるようにしたところです」と星氏。必要な部品をあらかじめ用意しておき、基本的にはそれらを組み合わせるだけで、アプリケーションを構築できる。